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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は先日紹介した
  吉村昭さんの『自選初期短篇集』の二巻め、
  『透明標本』を紹介します。
  私が吉村昭さんを初めて読んだのは
  高校生の時かと思いますが
  最初に読んだのは
  この二巻めに収録されている
  「星への旅」だったのではないかしら。
  なので今回は再読ということになりますが
  本当に久しぶりに
  読んだといえます。
  さすがにほとんどのことを忘れているのですが
  何故か主人公たちが東北の寒村に向かう
  ボロな自動車の印象だけが
  うっすらと自分のどこかに
  残っていました。
  昔読んだ作品を読み返すと
  そんな記憶の断片に
  自身驚かされます。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  吉村昭、ここに始まる Ⅱ                   

 この秋中公文庫から、1990年に新潮社から刊行された『吉村昭自選作品集』第一巻が二分冊されて刊行された。この巻がその二巻めとなる。
 吉村昭さんによる「後記」として、中公文庫二冊に収められた14篇の短篇小説が自身の24歳から39歳までに発表したものであることが書かれている。

 その二巻めにあたる本書では昭和36年に発表された「墓地の賑わい」から実質的に吉村昭さんの名を知らしめた第2回太宰治賞を受賞した「星への旅」、また芥川賞候補にもなり本巻の表題作にもなっている「透明標本」、さらには吉村自身を描いたともいえる背中の過去の手術あとを残した男の悲哀を描いた「背中の鉄道」、その他「電気機関車」「煉瓦塀」「キトク」の7篇が収められている。

 中でもなんといっても「星への旅」である。昭和41年雑誌「展望」に発表されたこの作品はそれまで賞に恵まれまかった吉村さんが「太宰治」の名を冠した賞を受賞したのであるから、その思いは口にはできないものがあったにちがいない。
 久しぶりに再読して(おそらく半世紀近いほど久しぶりに)、集団自殺をテーマにした作品ということまで忘れていた。
 そのタイトルがあまりにもロマンも駆り立てるので、死を扱ったものという記憶があったが、その内容は少なからず衝撃である。
 男女5人の若者が都会の倦怠から抜け出すべく東北の寒村の海に身を投じる。そこには死への称賛などあるはずもない。
 吉村さんの眼はあくまでも冷静に若者の行動を見つめている。
 この時すでに吉村さんにはのちに大成することになる記録文学の才能が開花し始めていたようにも思える作品である。
  
(2018/12/05 投稿)

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