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プレゼント 書評こぼれ話

  文庫本には
  巻末に同じ作家の既刊の案内となる
  広告のページがついていたりする。
  少し前に
  中公文庫吉村昭さんの『自選初期短篇集』を読んだ際、
  そこに既刊の文庫の案内があって
  そこで面白そうだと思ったのが
  今日紹介する
  『月夜の魚』である。
  「さまざまな死の光景を描いてなお深い慰めを与える」みたいなことが
  書かれていた。
  吉村昭さんの作品にある
  そういう死の光景のようなものに
  ひかれるところがある。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  死を見つめ続けた作家                   

 吉村昭が『星への旅』で第2回太宰治賞を受賞したのは昭和41年(1966年)のことである。同じ年に『戦艦武蔵』を発表し、記録文学の第一歩を歩みだす。
 つまり、この頃を起点として吉村の作家活動が旺盛になっていく。
 昭和54年(1979年)に刊行されたこの短編集には11篇の作品が収められていて、その初出の日付を見ると「行列」という作品が昭和44年で、そこから10年の間で発表された短編群にあたる。
 この時期には一方で記録文学の長編作品も多くをものにしているから、吉村にとっては心のバランスを保つようにして、これらの短編小説を書いていたのではないだろうか。

 この短編集には「蛍籠」「弱兵」「干潮」という、自身「私小説」に属すと語っている3つの作品がはいっている。
 「蛍籠」は甥の死、「弱兵」は戦死した兄の死、そして「干潮」は父の死を描いている。
 初期の吉村の作品でもそうだが、彼の作品には「死」の匂いが濃厚にたちあがるものが多い。それは自身が結核に冒され死の恐怖を知っているからだろう。
 「夜の海」という作品の中で、自身が作品を書く気持ちのようなものをこう綴っている。
 「戦後間もなく肺結核の治療のため手術台にしばりつけられたことが動機になっているように思う」と。
 その時間が何であったか、それが吉村の文学を解く鍵だろう。
 そこには間違いなく、「死」を見つめている作家の顔がある。
  
(2018/12/20 投稿)

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