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プレゼント 書評こぼれ話

  岩波文庫
  今年最初の新刊を見て
  驚いた。
  そして、うれしくなった。
  驚きとうれしさは同じ感情ではなく、
  流れる一連の感情だと思うが
  結局はうれしいのだった。
  開高健の短編集が
  岩波文庫に収録されたのだ。
  タイトルは『開高健短編選』。
  作家の大岡玲さんが選者。
  岩波書店の宣伝文には

    デビュー作から死の直前に書き遺された絶筆まで
    作家の生涯を一望する全十一篇


  とあります。
  そこで
  今日はこの文庫本にも収録されている
  「貝塚をつくる」を
  紹介します。
  岩波文庫開高健か。
  うれしいなぁ、やっぱり。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  戦争から釣り竿持って                   

 初出は昭和53年(1978年)の「文学界」2月号。全集版で30ページ足らずの短編である。
 開高健は昭和33年(1958年)に『裸の王様』という短編で第38回芥川賞を受賞しているから短編が多い作家のように思えたが、決してそうではない。
 というか、その作家人生の途中で書けない時間が多くなり、ノンフィクション作品も多く、その活動の幅を思うと、短編の少なさに驚くほどだ。

 開高が釣りの魅せられたのは有名で、時に洋酒メーカーの広告にもその釣り姿が出たほどだし、彼のノンフィクション作品の有名なものは釣り紀行のそれでもある。
 そして、開高のノンフィクション作品としてはベトナム戦争に従軍し、その戦地で見聞きしたものも知られている。
 その二つを合わせて書かれた短編が、本作である。
 ベトナム戦争の取材でかの地にいる主人公は、そこで同じ釣り好きの紳士をさがすことになる。
 見つけたのが華僑の大物で、四つの会社の社長を務める男。
 贅を尽くした彼の生活に驚きながらも、主人公には男に負けない釣りでの自慢がある。
 主人公のそんな釣りの成果を認め、男は主人公に釣りへの旅に誘う。
 二人を乗せた釣り船がゆらゆら漂うその向こうの陸地で戦闘が行われていても、それは主人公に「恐怖や妄想」を走らせるが、所詮は対岸の戦争である。
 このあたりの描写は見事だ。

 短篇の最後には軍隊から脱走し、島に一人で隠れている青年を訪ねていく挿話が描かれる。
 開高健は戦争から、いや戦争に巻き込まれた自身から終生逃れきれなかった一人かもしれない。
  
(2019/01/22 投稿)

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