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プレゼント 書評こぼれ話

  「令和」という
  新しい元号も決まり、
  いよいよ平成の時代も一ヶ月を
  きりました。
  平成という時代を振り返れば
  阪神大震災や東日本大震災といった
  未曾有の災害が起こり、
  決して平たんな時代ではなかったように思います。
  それでいて
  もうすぐ終わりを迎えるにあたって
  多くの国民が
  天皇陛下と皇后さまに惜しみない礼を尽くすのは
  このお二人が歩まれた道もまた
  平坦ではないことを
  よく知っているからだと思います。
  その苦難の道程を
  二人がたゆまず歩かれたこそ
  皇室を見る目が
  柔かくなったのではないでしょうか。

  先日NHKのドキュメンタリー「天皇 運命の物語」の
  最終話「皇后 美智子さま」を見ました。
  その映像を見ながら、
  美智子皇后がおられたから
  天皇だけでなく
  多くの国民も救われたのではないかと感じました。
  番組で
  美智子さまが幼年の時代に読んだ
  新美南吉の『でんでん虫のかなしみ』という童話が
  たびたび紹介されていました。
  生きていくことは、けっして楽ではない。
  そういうことをひっくるめての人生だということ。
  読書はなんと崇高なことを
  幼い少女であった美智子さま 教えたのでしょう。
  この番組のあと、
  もう一度、美智子さまの『橋をかける』という本を
  読み返しました。
  その美しい文章には
  これからもきっと多くのことを
  教えられることでしょう。
  今日は、
  2009年5月の時に読んだ書評を
  再録書評として掲載します。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  痛みを伴う愛を知るために                   

 この本には、皇后美智子さまが国際児童図書評議会の二つの大会でなされたふたつの講演と、それにいたる経緯を記した関係者の方たちの文章がいくつか収録されています。
 二つの大会とは、1998年のニューデリー(インド)大会と2002年のバーゼル(スイス)の大会です。
 ニューデリー大会の時の講演はビデオによるもので、この時話されたのが本書の書名ともなっている『橋をかける』です。

 この大会での講演がビデオによるものとなったのは、大会の直前でインドで核実験が行われたという政治的な事情があります。それで急遽ビデオ撮影となるのですが、撮影隊に気をつかわれる皇后美智子さまのお姿など、その間のエピソードをつづった、巻末の「文庫版によせて-皇后さまのご本ができるまで」(末盛千枝子)は読む者の興味をそそる内容です。
 「長年かけて準備して来たニューデリー大会に、ご自分の欠席が与えてしまうだろう傷を、最小限にくいとめようと努力」される皇后美智子さまのゆるぎのない姿、「いつも薄化粧で、(中略)そのことについて心配そうにお尋ね」になる細やかな女性としてのたしなみ、など、普段私たちが窺いしることのない皇后美智子さまの表情はとても美しい。

 その美しさは、ちょうど五十年前皇太子妃になられてからのご努力もあるでしょうが、子供時代の読書体験が美しさの「根っこ」としてあることが、ふたつの講演に接するとよくわかります。
 特に「橋をかける」と題された講演では、子供時代に読まれたたくさんの書名と作者たちの名前が出てきます。おそらく戦時中という出版事情が厳しいなかで、「何冊かの本が身近にあったことが、どんなに自分を楽しませ、励まし、個々の問題を解かないまでも、自分を歩き続けさせてくれたか」という思いにいたるまで、それらの本たちを慈しみ、励まされるようにして読まれていたことと想像します。
 そのようにして読まれることで、「読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても」という感慨をいだくまでになられていく。
 これこそ、読書がもっている力だと思います。

 この国において「皇室」の問題はデリケートですし、まして皇后というお立場であればなおさらです。
 しかし、この本に収められたふたつの講演は、皇后美智子さまということではなく、昭和・平成という時代を歩んできた一人の女性の語った、きわめて良質な「読書体験」として読まれていいのではないかと思います。
  
(2009/05/17 投稿)

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