06/11/2020 輪舞曲 ロンド(朝井 まかて):書評「まるで舞台のように」

今日は
朝井まかてさんの最新作
『輪舞曲 ロンド』を
紹介します。
この作品は歴史小説ですから
巻末には参考文献がずらりと並んでいます。
ちょっと気になったのが
この物語の主人公井澤蘭奢をかつて描いた
女性作家の作品があったのですが
それがなかった。
夏樹静子さんの『女優X』がそれ。
もう30年以上前の作品ですが
あえて
朝井まかてさんは読まなかったのかもしれません。
あるいは読んでいたのか。
さて、どちらだろうか。
じゃあ、読もう。

音楽に詳しくないので調べると、「輪舞曲」というのは「古典的な音楽形式」のひとつで、「ロンド」ともいわれ、「異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式」とある。
大正時代の新劇女優伊澤蘭奢(いざわらんじゃ)の生涯を描いた長編小説のタイトルに朝井まかてがこの「輪舞曲」と付けたのは、一人の女優を主軸にし、そこに関わっていく4人の男を描きながら、それでも描きたいのは彼女の、時代と戦い、家と戦い、性と闘う、そんな姿だったからかもしれない。
大正時代とはいえこれは歴史小説で、伊澤蘭奢という女優のことを全く知らなかったので、ウィキペディアで調べたが、小説に出てくる主要な人物は実在することがわかった。
彼女を愛人にした内藤民治、彼女が愛した徳川夢声、彼女を慕う福田清人、そして彼女の息子である伊藤佐喜雄。
この男たちにはそれぞれ違う姿を見せたといえるかもしれないが、実際は男たちが勝手にこしらえた姿ともいえる。
それでいうなら、伊澤蘭奢は間違いなく女優であったのだろう。
だからだろう、ラストで関東大震災で焼野原となった東京の片隅で彼女が演じた「桜の園」の舞台を見たという男が登場し、彼女の舞台に感動したことを伝える場面がある。
それはいかにも造られたラストであったが、この男もまた伊澤蘭奢という女優に魅せられた一人だったことは間違いない。
(2020/06/11 投稿)

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