06/17/2020 暦と暮らす 語り継ぎたい季語と知恵(宇多 喜代子):書評「「歳時記」とともに暮らす」

今日紹介する
宇多喜代子さんの
『暦と暮らす 語り継ぎたい季語と知恵』は
俳句の本でもありますから
当然たくさんの秀句も
掲載されています。
作者の宇多喜代子さんの俳句に限って
紹介させてもらいます。
日本のここが要の福寿草
これは表紙カバーの折り返しで
紹介されていた句ですが
この本の核心のような一句になっています。
ありなしの嵩の懐炉を旅の荷に
ここでの懐炉は近年の使い捨てカイロでしょう。
この本の表紙や中で
写真家武藤盈(みつる)さんの
『写真で綴る 昭和30年代 農山村の暮らし』が使われていて
これがまたいいんです。
じゃあ、読もう。

日曜の早朝に放送されている「NHK俳句」では4人の選者が担当しています。
昨年(2019年)の4人の選者のうちの1人が、この本の著者俳人の宇多喜代子さんでした。その時のテーマが「昭和のくらしと俳句」で、番組に宇多さん自身が使っていた懐かしい昭和の生活用品が並べられることもありました。
宇多さんは昭和10年生まれ。御両親は大正生まれ、祖父母が明治生まれと三代同居の生活であったそうです。
そんな宇多さんは、番組放送中の令和元年に文化功労者にも選ばれています。
本書は「NHK俳句」のテキストに連載されていたものを暦の順に編集されたものです。
この中で、「歳時記」のことがしばしば語られています。
「日本の季節と自然現象、それに準じた風土と人の暮らしのさまざま、これを知るのにもっともふさわしい書物」と、「はじめに」の冒頭に書かれています。
「歳時記」を開くと、「時候」「天文」「地理」「生活」「行事」「動物」「植物」とわかれていますが、その「生活」は昭和の頃と現代ではかなり変わってきています。
しかし、「先祖たちのなした生活にまつわる季語は、日本人の暮らし辞典として、生活文化の継承の導として、歳時記に留めておいてほしい」と、宇多さんはいいます。
そういう点から見れば、「歳時記」は今やタイムマシンでもあるのです。
そして、「最少の嵩にして最高の量のこの国の人々の衣食住や民間行事の情報を蔵した書物である歳時記は、子孫に残す文化遺産の最たるもの」と綴って終わります。
番組の最後に、そしてこの本にも書かれていますが、宇多さんは昭和の暮らしを振り返ってこう語っていました。
「おおくを手でこなすという生活はまことに不便でしたが、不幸ではありませんでした。」
(2020/06/17 投稿)

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