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プレゼント 書評こぼれ話

  今日は
  山本周五郎の短編選集
  『繁あね 美しい女たちの物語』を
  紹介します。
  山本周五郎といえば
  唯一直木賞を辞退した作家でも
  あります。
  1943年の第17回のことです。
  この時山本周五郎は40歳。
  辞退の言葉の中で
  「この賞の目的はなにも知りませんけれども、
  もっと新しい人、新しい作品にあてられるのがよいのではないか」と
  書いています。
  この時の対象になった作品が
  『日本婦道記』。
  その後の山本周五郎の活躍をみれば
  この時点ではまだまだ「新しい人」だったように
  思えるのですが。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  美しい花束                   

 「アンソロジー」という言葉は日本語で「詞華集」と訳されることもあるが、語源は「花束」であったという。
 この文庫の場合、「山本周五郎コレクション」となっているが、山本周五郎の数多い短編から7編を選りすぐった「アンソロジー」といえる。
 副題に「美しい女たちの物語」とあるが、まさに美しい花束のような一冊に仕上がっている。

 ここに収録されている7編は、「おさん」「三十二刻」「柘榴」「つばくろ」「あだこ」、それと『青べか物語』の中から「蜜柑の木」「繁あね」である。
 編集部による「編集後記」で、「美しい女たちの物語」という副題は「勁(つよ)い女たち」と言い換えた方がいいかもと記されているが、この作品集に限らず、山本周五郎の描く女性たちは勁さが魅力になっている。
 きっと山本周五郎にとっての女性像とは自身が持たない、ゆえに敬慕するしかないほどの神秘性を持ったものだったにちがいない。

 それは女体の神秘性といってもいいかもしれない。
 表題作である「繁あね」は、繁あねという貧しく親も家も持たない13歳の少女を描いている。作者は偶然にその少女の内股を見てしまう。その時のことを「信じがたいほど美しいものを見た」と綴る。
 あるいは、夫婦の営みの最中に大きな嬌声を発する女性を描いた「おさん」。そんな特異な女を忘れられずに葛藤する男を描いている。女性という異性の神秘の沼に引きずられていく姿は哀しい。

 それぞれ色も形も違う花であっても、山本周五郎の匂いのする花束のようなアンソロジーである。
  
(2020/07/18  投稿)

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