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プレゼント 書評こぼれ話

  脚本家の桂千穂さんが
  8月13日に亡くなったという訃報が
  昨日の新聞に載っていました。
  90歳だったそうです。
  読売新聞のネット記事には

     にっかつロマンポルノ作品をはじめ、「HOUSE ハウス」「花筐 HANAGATAMI」といった
     大林宣彦監督作品など、多くの脚本を手がけた。日本シナリオ作家協会の理事などを歴任。

  とあります。
  私は5年ほど前にシナリオの勉強をしたことがあって
  その時通ったシナリオ学校の
  桂千穂さんは学長でした。
  実際直接講義を受けたこともあります。
  私にとって桂千穂さんは
  やはりロマンポルノの脚本家で
  当時この人のことを女性だとばかり思っていて
  女性でもポルノ映画の脚本を書けるんだと
  勘違いしていたことがあります。
  かつて桂千穂さんはロマンポルノのことを
  こう記しています。

    人材を輩出した日活ロマンポルノは、日本映画のひとつの奇跡だったのかもしれない。

  桂千穂さんも
  奇跡のひとりだったのだと思います。
  今日は桂千穂さんを偲んで
  寺脇研さんの『ロマンポルノの時代』を
  再録書評で紹介します。

  ご冥福をお祈りします。

  さようなら、桂千穂さん。 

  

sai.wingpen  青春時代のまん中は道に迷っているばかり                   

 私にとって、本書の著者寺脇研さんは思い入れのある映画評論家です。
 私が高校生の頃、かれこれ40年も前のことです、いっぱしの映画青年きどりで映画専門誌「キネマ旬報」を愛読し、その「読者の映画評」コーナーにせっせと投稿していた頃、そのコーナーの常連が寺脇研さんでした。
 当時寺脇さんもまだ高校生だったのではないかなぁ。しばしば掲載されていましたから、私のような投稿者とは随分質のしっかりした内容だったような気がします。(本書にはその当時の投稿記事も掲載されています)
 社会人になり私はあまり映画を観なくなって寺脇さんのことも忘れていたのですが、偶然にも文部省の役人になったあとの寺脇さんの講演を聴く機会がありました。
 小さな会でしたので、そのあと懇話みたいな会があって、寺脇さん本人と話す機会があって投稿時代の話をしましたが、もちろん寺脇さんは数回しか採用されなかった私のことなど知りませんでした。
 私にはあの頃のことがただただ懐かしく、あの頃はまさに「映画の時代」であり、「ロマンポルノの時代」だったのです。そう、1971年からの数年間は私にとって「青春時代」そのものでした。

 日活ロマンポルノがスタートしたのは、1971年11月。
 経営に行き詰った日活が苦肉の策としてはじめた企画でした。
 たくさんのスターを輩出し、数多くの名作を生み出した日活が低予算でしかもエロ映画まがいの作品をつくるということで、所属のスターだけでなく多くの人材が外部に流出してしまいます。皮肉にもそのことがロマンポルノに勢いをつけました。白川和子、片桐夕子、山科ゆり、宮下順子といった女優だけでなく、神代辰巳や田中登といった名監督が誕生しました。
 映画作りの若いエネルギーは映画にも力を与えましたし、若い映画ファンや映画評論家は喝采をもって迎えました。当時の「キネマ旬報」がそれに大いに貢献したことは、本書でつぶさに検証されています。

 また、この本では従来あまり評価されていないロマンポルノの後期の作品にも光をあてています。現在の日本映画を支える監督たちがロマンポルノを契機として誕生している事実は、日本映画史にとってロマンポルノは特筆すべき作品群であったことを証明しています。
 また寺脇さんはポルノ作品では裏方でもある男優や脚本家にも目をそそいでいます。
 「ロマンポルノの時代」を生きたものにとっては青春の思い出のような、一冊です。
  
(2012/08/30 投稿)

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