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プレゼント 書評こぼれ話

  本当に久しぶりに
  宮本輝さんの新しい長編小説を
  読みました。
  『灯台からの響き』という作品です。
  宮本輝さんに一時
  はまったことがあって
  新しい本が出るたびに読み、
  文庫本になれば買い、
  ほとんどの作品を読破していました。
  そんな日々が
  今では懐かしいくらいです。
  この作品の中で
  バーネットが書いた『小公子』からの一節が
  紹介されています。

    すべての人の人生にはじっさいに、
    目をみはるほどの幸福が数多くあるのですから。

  いい本との出会いは
  まさにそんな幸福の一つです。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  灯台が読者にもたらすもの                   

 長編小説の面白さはなんといってはさまざまな枝葉の数々といえる。
 気がつけばそれは一本の大木というより深い森の中で樹々の呼吸に生かされているような感覚といっていい。
 宮本輝氏が2019年2月から2020年1月にかけて地方新聞紙に連載した新聞小説であるこの長編小説もまた、読み終われば森の樹々たちに抱かれているようでもある。
 もちろん、主人公である2年前に妻蘭子を不意に亡くした牧野康平という男の生き方や思いが大きな木であることは間違いないが、康平という木に寄り添うようにしてあった蘭子という木もまた、この物語の欠かせないテーマといえる。
 あるいは、康平の娘や二人の息子との関わりもまた康平という大きな木につながる枝葉だし、親と子の関係を描くのに高校を中退した康平に本を読むことを薦める同級生と彼の死のあとに現れる隠し子だった青年の登場もまた森を形作る要素になっている。

 長い物語の発端は妻を亡くして呆然自失の康平がたまたま見つけた、若い頃の妻宛てに届いた一通のハガキだった。
 そこには男性の名前で「見たかった灯台をすべて見た」と書かれ、地図のようなものも描かれていた。
 その時、蘭子が差出人である人の名前を知らないと言っていたことを康平は覚えていた。
 そんなハガキをどうして蘭子は大事にしていたのか。
 康平はこのハガキに誘われるようにして各地の灯台めぐりを始める。
 やがて、それは蘭子と差出人であった男性との秘密につながっていく。

 灯台が灯す灯りは亡くなった蘭子からのメッセージでもあるかのように、康平の新しい日々を照らしていく。
 読み進むにつけて、宮本氏の文体が冴えてくる、そんな長編小説だ。
  
(2020/10/30 投稿)

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