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プレゼント 書評こぼれ話

  漫画家矢口高雄さんの訃報に接して
  矢口高雄さんの自伝エッセイ
  『釣りキチ三平の釣れづれの記 平成版』を
  追悼の心を込めて紹介しましたが
  実はあの本が出た2008年に
  一度読んでいたことがわかりました。
  その時に
  オンライン書店bk1に投稿した書評があったので
  今日はそれを蔵出し書評として紹介します。
  投稿日は2008年10月26日ですから
  このブログを始める数カ月前です。
  なので
  このブログでの紹介は初めてです。
  12年前も気分的には
  あまり変わっていなくて
  矢口高雄さんが東京に出る際の奥さんとのやりとりなど
  やっぱり今回も感動しました。
  同じ本を2日連続の紹介は初めてかも。

  じゃあ、読もう。


  

sai.wingpen  追悼・矢口高雄さん 2 - 釣りキチ三平はエッセイもうまかった                   

 漫画家を目指す若者は多い。
 漫画を見て愉しんで、そこに白い紙を鉛筆があれば、ちょこっと描いてみる。そこに広がる夢は自分の漫画世界だけではなく、自分が人気漫画家になって活躍している夢かもしれない。
 私にもそんな時期があった。もうずっと昔のことだが。
 それで買ったのが石ノ森章太郎氏の『マンガ家入門』という、漫画家を目指す人間にとってはバイブルのような一冊。でも、長続きはしなかった。
 絵のセンスがまるでなかったし、石ノ森氏がその本で書いているが「一生けんめいかくこと。たゆみない努力」が出来なかった。
 まさに凡人の典型である。

 本書は「週刊少年マガジン50周年記念 特別企画シリーズ」として刊行された三冊の中の一冊。
 「マガジン」に限らず週刊漫画雑誌が若者に与えた影響は大きいと思われる。初期の「マガジン」「サンデー」(そして「ガロ」「COM」といったより専門的な雑誌も含まれるが)、そのあとに続く「ジャンプ」「チャンピオン」に登場する若い漫画家を生み育てていったといえる。
 何故なら、そこに「漫画」があったから。
 「漫画」が身近になることで職業として確立しやすかったのではないだろうか。

 本書の著者である矢口高雄氏は「マガジン」で『釣りキチ三平』を連載(1973年~1983年)し好評を博した漫画家である(私の個人的な好みでいえば氏の『おらが村』の方が好き)。
 そして、矢口氏は元銀行員という肩書きをもち、漫画家としてのデビューも三十歳と遅い。
 それゆえに一漫画家志望の青年が本当にその夢を実現してしまう過程を綴った本書の前半部分は、漫画家を目指そうとする人には興味深いだろう。
 あるいは漫画家でなくても夢を実現したいと悶々としている人も参考になるだろう。
 先の石ノ森氏の著作の言葉にはこんな文章が続く。「これは何もマンガだけに限ったことではなく、(中略)その道を極めたいと思ったら、こうする以外に方法はありません」と。
 秋田で銀行員をしていた矢口青年(といってもすでに結婚されていたようだが)が有給休暇を利用して東京の出版社や先輩作家を訪問する挿話がある。
 そこで白土三平(カムイだ!)や水木しげる(鬼太郎だ!)といった本物の迫力を目の当たりにする。
 まだ東北新幹線もなかった時代である。
 こういうエネルギーが「その道を極め」るには必要なんだなと思い知らされる。さらに、そのつど矢口氏は手土産を持参するのだが、このあたりが大人というか銀行員らしさがにじみでて、面白い。
 やがて矢口氏は銀行員をやめ職業としての漫画家を決意することになる。
 その際の奥さんの言葉がいい。「反対したいのは山々だけど、もしここで私に反対されて思いとどまったとしたら、あなたはきっとそのことを一生言い続けるでしょう」「私にとっては、目先の苦労よりもそのほうがはるかにつらく、きっと耐えられないわ。だから、どうぞおやりください・・・」
 こうして矢口氏は漫画家の道に入り、その後の『釣りキチ三平』他の人気作品を次々と量産していくことになる。
 しかし、矢口氏はけっして幻の魚を釣りあげたのではない。魚を釣るまでに釣り場を丹念に歩き、天候を見、竿を吟味し、浮子を選んだのだ。
 そして、時を待った。
 やがて、魚の片鱗が輝き、漫画家矢口高雄が誕生するのである。
  
(2008/10/26 投稿)

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