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プレゼント 書評こぼれ話

  映画雑誌「キネマ旬報」が毎年発表する
  映画ベストテンは
  2019年で93回を迎える
  由緒あるものだが
  時々首を傾げたくなる時がある。
  2019年に日本映画1位となった
  荒井晴彦監督の「火口のふたり」もそうで
  封切りのタイミングもあるだろうが
  読者が選ぶベストテンには顔も出ていない。
  どんな作品だろうかと気になりつつ
  年末を迎えた頃
  ようやくCSで観ることができた。

  

  R15の指定付なので
  劇中セックスシーンがたくさんある。
  決して悪い作品ではないし
  ヒロインを演じた瀧内公美さんが抜群にいいし
  (彼女はこの年この作品で主演女優賞を受賞)
  ほとんど二人芝居の相手役柄本佑さんもいいけど
  この作品が1位かと言われたら
  さてどうかな。
  原作は白石一文さんで
  なんと私は2012年に読んでいました。
  そこで、
  今日は再録書評で紹介します。
  原作も過激だったんですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  これは近未来小説                   

 この小説は現代小説風ですが、近未来小説だ。
 東日本大震災から三年たったという想定で、もちろん、私たちはまだその日を経験していない。ここに描かれたことが起こるのかどうか誰もわからない。
 もっというなら、この物語の主人公のように就職した銀行をある不祥事をきっかけに辞め、妻子と別れ、そのあと立ち上げた会社も震災の影響でたちゆかなくなり、九州のふるさとに従妹の結婚でもどることになることも、主人公でなくともわからない未来なのだ。

 主人公の賢治は41歳。従妹の直子は36歳。二人は兄妹同然に育った仲のいい親戚だ。
 しかし、以前二人には肉体的な関係があった。それもかなり深く。
 今度の賢治の帰省はそんな直子の結婚式の参列だった。
 しかし、賢治には過去の関係の余熱はない。直子と別れてから、賢治は結婚し、娘をもうけ、そして破綻した。直子とのことは遠い日々だ。
 直子は違った。賢治をいまだに愛している。そして、一度だけの関係を求める。

 この物語には過激な性描写がある。獣のような激しい官能。
 一度だけの約束は、結婚式までにと変えられ、二人はかつての日々のように泥沼のような性を繰り返す。
 繰り返すが、これは近未来小説だ。
 まだ来ない日々だ。
 だとしたら、この物語すべてが賢治か、もしくは直子の妄想かもしれない。あるいは、願い。
 未来から過去へ、二人の官能はいとも簡単に行き来する。

 読み手(私もふくめ)は、とても混乱する。作者の意図がわからない。
 題名が表すように、火山の火口で危うい均衡をたもっている恋愛は、あることをきっかけにしてその大地の熱に堕ちていくのではないか。
 いや、火口は、愛するものだけは持ちうる熱情の出口なのか。

 誰もが不安を感じるいま。
 私たちの足元の大地がふたたび大きく揺れる不安を秘めているように、男と女の関係もまたふたたび火をはなつこともある。
 繰り返すが、これは近未来小説なのだ。
  
(2012/12/15 投稿)

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