04/01/2021 食べちゃいたい(佐野 洋子):書評「なんとも不思議な、ここは野菜王国」

今日は四月一日。
エープリルフールでもあります。
万愚節ともいうらしい。
エープリルフールの駅の時計かな 轡田 進
騙してもいい日だからということでもないですが
今日は
佐野洋子さんの『食べちゃいたい』という
野菜や果物を
不思議なタッチで描いた
ショートショートを紹介します。
読後感は
何だか騙し絵を見せられたあとのような感じです。
でも、最近
四月一日だからといって
嘘ついていないな。
じゃあ、読もう。

「擬人法」を「広辞苑」で調べると、「人でないものを人に見立てて表現する技法」と出ている。
画家で絵本作家でエッセイストでもある佐野洋子さんが1992年に発表したこの作品は、野菜と果物を「人に見立てて」不思議な世界を生み出したショートショートである。
描かれているのは、ねぎ、れんこん、だいこん、山芋、じゃがいも(ここまでは目次の順)などの野菜、ほかにもピーマン、きゅうり、玉葱といったふうに、大抵の野菜は描かれている。
果物はりんご、みかん、ばなな、メロンと、こちらもほとんどある。
では、それがどんな風に擬人化されているか。
例として、ばななをあげよう。
ばななは一軒の家に住む五人の姉妹の姿で描かれる。
ある日、上の姉さんがいない。「けっこう男の人に媚売ってた」とか妹たちにかげ口を叩かれている。
次の日、一番下の妹がいなくなり、やがて私も男に連れ去られていく。
男は「私のことじっと見たかと思うと、ひと思いに私を剥いたの」とある。
そりゃばななだもの、皮剥きます。
そんなショートショートが続くのです。
野菜や果物をよく観察したものということもできますが、佐野さんってそんな軟な書き手ではないような気がする。
読者を日常ではない世界に連れ出してやろう、と舌でも出しながら書いていたのではないだろうか。
佐野さんの男と女のイラストも楽しめる、不思議な一冊。
(2021/04/01 投稿)

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