04/08/2021 俺と師匠とブルーボーイとストリッパー(桜木 紫乃):書評「おとなのファンタジー」

最近訃報記事が続いています。
その間新しい本を読んでいない訳ではなく
今日は桜木紫乃さんの新刊
『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』を
紹介します。
書評にも書きましたが
おかしなタイトルですが
読み終わったあとには
きっとこのタイトルに納得されると思います。
タイトルの付け方って
結構難しいですが
桜木紫乃さんのこれまでの作品を見ると
とてもタイトルの付け方が上手いと
思っています。
じゃあ、読もう。

小説巧者の桜木紫乃さんにしては随分そっけないヘタなタイトルをつけたものだと、読む前には思ったが、読んだ後は、この作品にぴったりのタイトルだと納得した。
なので、タイトルだけでこの作品を読まないのは損だと最初に言っておく。
さらにいえば、これって天使の話じゃないか。
そう、例えばウィル・スミスが主演した「素晴らしきかな、人生」という映画(こちらもタイトルで随分損をしていたが)のような感じかな。
もっともお話は全然違うけれど。
主人公は北国のキャバレー「パラダイス」で働く二十歳の青年章介。
夢も希望もなく、その日をただ生きているような日々に、博打打だった父の遺骨が母から持ち込まれる。だが、それをどうするあてさえない。
章介の働くキャバレーにやってきた三人のタレント。
自分のことを「師匠」と呼びなさいという世界的有名マジシャン「チャーリー片西」、シャンソン界の大御所という触れ込みの「ブルーボーイ」の「ソコ・シャネル」、今世紀最大級の踊り子といいつつ実はストリッパーの「フラワーひとみ」。
彼らの世話だけでなく、章介の暮らす倉庫のような「寮」で公演期間をともに生活するようになる。
底辺に生きながらもポジティブに生きる彼らにいつしか章介も影響を受けていく。
章介が次第に変わっていく姿に読者も静かに感動している。
桜木紫乃さんのこの長編小説はそんな素敵なファンタジーだ。
(2021/04/08 投稿)

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