04/25/2021 水の絵本(作 長田 弘/絵 荒井 良二):書評「いのちの豊穣を抱えながら」

今日から
東京・大阪・兵庫・京都で
三度めとなる緊急事態宣言が
始まりました。
せっかく気候のいい季節になりながら
新型コロナウイルスとの戦いに
自粛をしなければならないのは
残念ですが、
ワクチンの接種が終わるまで
きっと何度もこういうことが続くのだと思います。
せめて
本の中だけでも
季節を味わいたい。
そこで
今日は
長田弘さん文、
荒井良二さん絵の
『水の絵本』を
紹介します。
ちょっとは気分が変わるかもしれませんよ。
じゃあ、読もう。

茨木のり子さんに「水の星」という詩があります。(詩集『倚りかからず』収載)
その詩の一節に「いのちの豊穣を抱えながら/どこかさびしげな 水の星」とありますが、まさにその「いのちの豊穣」に呼応するように、この絵本で文章、それはまさに詩といってもいいですが、を綴った長田弘はこう書いています。
「ははのように いのちを つくり/ちのように からだを めぐり/たましいを ぬぐってくれる」と。
それは、水のことです。
茨木のり子さんが「水一滴もこぼさずに廻る」と驚いたこの星は、水にあふれた星なのです。
この絵本でまず驚くのは、荒井良二さんの絵だと思います。
表紙の一面の黄緑色。普通水を絵で描けと言われたら、水色を使うのに、荒井さんはそうではない。
黄緑色であっても、ああこれは水なのだと誰もが実感できる。
長田さんの文にこうあります。
「どんな いろお してないのに/どんな いろにでも なれるもの」。
そういえば、水は決して水色でもない。
透明であるけれども、いろんな色を持っている。
そこにも、豊穣を感じます。
宇宙に浮かぶ地球がこの絵本にも描かれています。
茨木のり子さんが見た「水の星」は、ちょうどこの荒井さんが描いた星のようであったにちがいない。
長田さんが思った水も、またそうであったにちがいない。
色んなことを考えてしまう、そんな絵本です。
(2021/04/25 投稿)

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