04/30/2021 謎のクィン氏(アガサ・クリスティー):書評「Mysteriousな短編集」

今年初めに
毎月一冊はアガサ・クリスティーの作品を読もうと
目標を立てて
三月は最後の日での紹介となったので
もっと早めに読まないとと
反省したのですが
今月も
やっぱり最後の日にすべりこみとなりました。
来月こそ
もっと余裕をもって読みますね。
今回紹介するのは
『謎のクィン氏』という短編集。
霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』では
★★★★★の
高評価。
ただ私はちょっと苦手でした。
それとこの作品を読み解くには
演劇とか音楽とか
広い知識が必要かも。
じゃあ、読もう。

アガサ・クリスティーが1930年に発表した、短編集として三作目となる作品。
不思議なタイトルがついているが、原題の「The Mysterious Mr.Quin」の方が作品の雰囲気を伝えているように思える。
ここには12篇の短篇が収められていて、殺人事件を解く作品だけでなく、恋愛ものと呼んでいい作品もあって、単にミステリーというジャンルでくくられない。
どの作品にも、「黒髪で、陰気で、微笑んでいながら、悲しげ」に見えるハーリ・クィン氏が登場するが、彼は「探偵」ではないし、この短編集の主人公とも言い難い。
どちらかといえば、社交界の通じた69歳の紳士サタースウェイト氏が主人公といえる。
彼は「人生という名のドラマの熱心な研究者」で、「人間たちがくりひろげる悲喜劇に、なみはずれた興味」を抱いている。
だから、ここで描かれる12の事件は、サタースウェイト氏が自ら呼び寄せたものともいえる。
さらに、クィン氏もまたサタースウェイト氏が呼びだした不可思議な存在といえる。
クィン氏は自ら謎を解かない。彼は「印象というものに重き」をおき、それをサタースウェイト氏に伝えるだけだ。
サタースウェイト氏も次第にクィン氏が現れたら、何か事件性があることに気がついてくるのだが、クィン氏が何者なのかはわかっていない。
いや、サタースウェイト氏も次第にクィン氏がこの世に存在しないものであることに気がついてくる。
短篇を読み進むうちに、読者もそのことに気がつくだろうが、ではクィン氏は何者なのか、わからない。
なんともMysteriousな短編集だ。
(2021/04/30 投稿)

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