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プレゼント 書評こぼれ話

  吉村昭さんが亡くなったのは
  2006年7月31日ですから
  もうすぐ15年めの命日がやってきます。
  今日は
  吉村昭さんの
  『冬の道 吉村昭自選中期短編集』を
  紹介します。
  中公文庫から今年の3月に出た短編集です。
  こうして歿後も本が出版されるのですから
  吉村昭さんの作品は
  新しい読者を生み続けているといえます。
  こういう短編集を読むと
  しばらく吉村昭さんの世界に
  浸っていたくなります。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  吉村昭充実の中期短編集                   

 中公文庫による「吉村昭自選短編集」シリーズの、「初期」2冊に続く「中期」集である。
 もちろん吉村昭自身は2006年に亡くなっているが、生前「自選作品集」を自身の手で編んでいて、この文庫ではそれを底本としているので「自選」となっている。
 ここでが1974年から1985年までに発表された短篇10篇が収められている。
 もちろんこの期間で吉村が発表した短篇はもっとあるが、文芸評論家の池上冬樹氏が編集にあたっている。

 収められた10篇のうち、表題作である「冬の道」と「黄水仙」、それと「欠けた月」は「父親三部作」ともいえる作品。
 吉村自身は決して私小説作家ではないが、自身の周辺を描いた作品に読み応えのあるものが多いのも確かである。
 この3作も、外に女をこしらえた父を激しく憎悪するも、空襲により行方不明になった父を探し歩く主人公が避難した女の家でくつろぐ父を見てどこか癒される「黄水仙」、それに続く「欠けた月」は病気で倒れた父のために医者を求めて奮闘する主人公の心の綾が描かれる。
 表題作の「冬の道」はついに命が尽きた父の死の姿を描いている。
 私小説だが、対象と作者自身の距離感が絶妙だ。ぬめっとした感じではなく、乾いた視線が吉村らしい。

 その他にも刑務所ものといわれる作品が多く収められている。
 冒頭の「鳳仙花」もそうで、刑務所職員が立ち会う死刑執行の日が描かれている。
 作品の書き出しは主人公の妻が嬰児に母乳を与える場面で、生と死のコントラストが実に見事というしかない。

 読み応えのある短編集だ。
  
(2021/06/30 投稿)

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