FC2ブログ
プレゼント 書評こぼれ話

  先日来
  吉村昭さんの作品を読んでいて
  とても気持ちのいい読書体験ができました。
  ちょっとしばらく
  吉村昭さんの作品を読み続けてもいいかもと
  今回また短編集を手にしました。
  『碇星』という
  後期の短編集です。
  この短編集では
  定年を迎えた男たちの姿を描いた作品がいくつかあって
  おそらく男性読者にとっては
  切ない物語になっているかもしれません。
  それでも
  吉村昭さんが描くと
  湿っぽくならないのがいいですね。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  生と死をみつめた短編集                   

 2006年7月に79歳で亡くなった吉村昭が1999年に発表した短編集。
 表題作である「碇星」をはじめとした8つの短篇が収められている。
 吉村の長い作家活動の中でいえば、後期に属するもので、「死」や「老い」が色濃く出た作品が多い。

 表題作の「碇星」は、定年を迎えたもののそれまでの会社での技能を認められて嘱託として会社での居場所を見つけた男の物語だ。
 彼の技能というのは社員が死去した際の葬儀等の取り仕切り。つまり、会社の葬儀係として彼は会社に残る。
 そんな彼のもとにかつての上司から、自分が亡くなった時に葬儀の面倒を見てもらいたいという依頼がくる。
 かつての上司は棺に窓をいれないで欲しいという。というのも、自分は碇星だけを見てこの世を去っていきたいと願っている。
 碇星というのは、カシオペア座のことだという。
 葬儀係として生き場所を見つけた主人公と星をめざして死に行こうとする男の対比が切ない。

 「飲み友達」「喫煙コーナー」「受話器」も仕事を終えて行き場所のない男たちの姿が身につまされる。
 その一方で夫の定年とともに妻という役割も終えてしまう女性がいる。それが「寒牡丹」という作品に描かれる夫婦の姿だ。

 一番胸を打つのは、やはり「花火」という作品だろうか。
 吉村が若い時に結核に冒されながらも当時日本でまだ多くの執刀事例がなかった胸郭成形術で命を長らえた話は有名だが、その執刀医である醍醐医師の死を描いて、自身の生を静かに見つめた心に残る一篇である。
  
(2021/07/01 投稿)

    芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
Secret

TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/4742-5a53a8ba