10/08/2021 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び(大島 真寿美):書評「女たちがいるから世界が生きる」

今日紹介する
大島真寿美さんの
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』は
第161回直木賞受賞作で
同時に高校生直木賞のW受賞となった作品です。
高校生直木賞というのは
高校生が直木賞の候補作から自分たちの視点で
独自で選考するというものです。
2014年から始まっています。
それにしても
高校生の皆さんが
大島真寿美さんのこの作品を選ぶなんて
渋すぎ。
同じ回には窪美澄さんの
『トリニティ』なんかもあったのですが。
じゃあ、読もう。

第161回直木賞受賞作。(2019年)
この長編小説は、江戸時代の大坂・道頓堀を舞台に人形浄瑠璃作家近松半二を描いたもの。国語や日本史の教科書には近松門左衛門の名前はよく出てくるが、近松半二は実際にいた人物ながらほとんど知られていない。
そのあたりがこの作品をとっつきにくくしている。
直木賞の選考委員のひとり浅田次郎氏は「いったいどれほどの読者の理解を得られるかと思えば、ためらいが先に立った」と評価が低い一方、宮部みゆき委員は「私は人形浄瑠璃はもとより歌舞伎にも疎い不勉強者なので、最初のうちは敷居が高く、おそるおそるという感じだったのですが」と正直に書き、読み進むうちに楽しくなったと評価している。
一方でこの作品は浄瑠璃作家が主人公で、創作にかかる苦悩が随所に書かれていて、そのことを評価する委員も多かった。
「物語を紡ぐ者として同意できる部分が多々あり、楽しめた。」と書いたのは東野圭吾氏。
また北方謙三氏は「表現者たちの熱気の渦は強く感じた」と評している。
それ以上にこの作品が断然面白くなるのは、女性の登場シーンだ。
半二に辛くあたる母親にしろ、半二の兄の元婚約者ながら捨てられてしまう幼馴染のお末にしろ、半二のよき理解者である嫁のお佐久にしろ、彼女たちが登場すると俄然物語が輝いてくる。
女性作家ゆえの功績ともいえるが、この作品はその点をもっと評価されていい。
(2021/10/08 投稿)

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