10/26/2021 マン島の黄金(アガサ・クリスティー):書評「12の味が楽しめるキャンディ缶のよう」

今回のアガサ・クリスティーは
短編集。
この短編集には
12篇の作品が収められていて
タイトルの『マン島の黄金』は
そのうちにひとつの作品。
いつもの
霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』にも
「珠玉の作品集」と書かれていて、
評価も★★★★と
高い。
ポアロものも2篇あって
さすがに安定力がつよい。
絶対安心のスラッガーというところだろうか。
じゃあ、読もう。

この短編集については説明がいる。
何しろここに収められているのは、アガサ・クリスティーの死後発掘された短編で、1997年8月にイギリスで刊行された9篇と独自に3篇加えた全12篇の短編からできている。
アガサが亡くなったのは1976年だから、この本が新たに出た時には彼女のファンは大いに喜んだのではないだろうか。
しかも、そのうち2篇(「クリスマスの冒険」と「バグダッドの大櫃の謎」)には名探偵ポアロも登場する作品だし、「クィン氏のティー・セット」は幻想的な人物クィン氏が登場する作品で、まさに文庫本の解説小文にあるように「バラエティに富んだ拾遺集」といえる。
表題作の「マン島の黄金」は1930年に書かれたもので、実はマン島(実際に存在する島)の観光誘致のためのノベルティ作品で、実際この作品で黄金探しをした人もあったという。
アガサもこの時期執筆活動も充実してきていて、企画に携わって人も大いに期待したのではないだろうか。(ただ作品としては短すぎて、出来はもうひとつのように感じた)
12篇の作品の中では「名演技」という1923年に発表された短編が好きだ。
今は人気女優となっているオルガだが、過去に忌まわしい事件に関係したことがある。そのことを偶然に知ったやくざ男がオルガをゆすりにかかる。そのやくざ男にオルガが仕掛けた罠、そしてオルガが演じた「名演技」。
小品ながら、最後に拍手を送りたくなる作品。
そのほか、「崖っぷち」「白木蓮の花」など、いい短編がそろっている。
(2021/10/26 投稿)

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