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プレゼント 書評こぼれ話

  芥川賞作家で元東京都知事の
  石原慎太郎さんが亡くなったというニュースが
  昨日コロナ禍が蔓延する日本列島を駆け巡りました。
  思えば、
  石原慎太郎さんが『太陽の季節』で芥川賞を受賞した時も衝撃できたし、
  国会議員や東京都知事に当選した時も
  圧倒的でした。
  やはりあのデビュー作があったから
  この人は何かしてくれるのではないかという期待が
  多くの人にあったのだと思います。
  政治家としての功罪は
  これから歴史家が明らかにするでしょうが、
  作家として成し遂げた実績はもっと評価されてもいいかもしれません。
  私が『太陽の季節』を読んだのは
  高校生の時でしたし、
  そのあと当時新潮文庫で揃っていた作品を
  何冊か読んだものです。
  今日は追悼の思いを込めて
  『太陽の季節』を再録書評で載せておきます。
  この書評を書いた2012年は
  まだ東京都知事でした。
  考えてみれば、
  89歳の人生、ずっと駆け足でした。

  石原慎太郎さん
  お疲れさまでした。

  ご冥福をお祈りします

  

sai.wingpen  追悼・石原慎太郎さん - これは事件でした!                   

 第34回芥川賞受賞作。(1955年)
 いうまでもなく、2012年当時東京都都知事である石原慎太郎の記念すべき作品で、この作品がなければ今の都政も存在しなかったかもしれないし、石原裕次郎というスターも誕生しなかったかもしれない。
 あるいは、芥川賞自体が今でも社会的な出来事として取り上げられるのは、この作品があったおかげである。
それほどに、当時(昭和30年)の日本にとって、この作品がもたらしたものは大きい。
 戦後という、あるいは昭和という歴史を論じる場合であっても、この作品、あるいはこの作品があらわにした風俗を避けてはとおれない。

 受賞時の選評を読むと、石川達三委員が「危険を感じながら」推薦し、舟橋聖一委員は「ハッタリや嫌味があっても、非常に明るくはっきりしている」と絶賛する一方、佐藤春夫委員は「風俗小説」と断じ、「この当選に連帯責任は負わない」とまで言い切っている。もう一人の反対者宇野浩二委員も「一種の下らぬ通俗小説」としている。

 では、この作品が「風俗小説」あるいは「通俗小説」であったかといえば、昭和30年という時代背景を考えると、ここに書かれた青年たちの行動は先鋭な階級たちのめぐまれたものといえる。
 大学に通い、ヨットを持ち、毎夜ナイトバーに出入りする若者。当時、どれだけの人がそういう世界を共有していただろうか。
 多くの庶民はまだまだ貧しい生活を強いられていた。中学を出て働く若者はたくさんいた。
 だとすれば、当時この作品が読まれたのは、まだ見ぬ世界をのぞかせてくれる映画的な世界の延長としてあっただろうし、階級を越えて充足されない青春期の苛立ちの共有としてあったのだと推測される。

 この作品の発表から60年近い年月が経ち、現代の若者たちがこの作品をつまらないと評するのは短絡的すぎる。
 この作品が発表された当時の社会のありかたを想像さえできれば、それを取り除けばあまりにも純粋な青春小説として読むことは可能だ。
 作者である石原慎太郎は2012年芥川賞の選考委員を「刺激がない」と辞任したが、石原の受賞作が「刺激があった」とすれば障子を突き破った陰茎ぐらいかもしれない。
 それほどに、この作品の根底にあるのは、常に変わらぬ青春期の彷徨だといえる。
  
(2012/10/12 投稿)

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