07/06/2022 みぎわに立って(田尻 久子):書評「いい本は人と人との出会いから生まれる」

田尻久子さんの文章に
すっかりはまってしまいました。
今年も半年を過ぎたばかりですが
今年のベストワンはきっと
田尻久子さんの本を選びそうで
こんなに早々に決めていいのかしら。
今日は田尻久子さんの
『みぎわに立って』という随筆集。
こういう人が本屋さんを営んでいるというのは
なんて素敵なんでしょう。
ほとんど面識のない人から
開店周年のお祝いケーキが届くのも
わかるような気がします。
いい本でした。
じゃあ、読もう。

熊本で「橙書店」という本屋さんを営む田尻久子さんには、多くはないが、素敵な随筆集が数冊ある。
そのうちの一冊『橙書店にて』という本を読んだあと、「いい文章は、水に似ている。」というのが最初の印象でしたが、田尻さんの文章に同じような感想が抱く人がいるようで、彼女の最初の随筆集となったこの本のなかに新聞連載の文章を読んで昔会社の同僚であった人から「水のような文章だとほめてくれた」という挿話が綴られている。
そのあとで、田尻さんはこう結ぶ。
「流れる水のような文章を書きたいのかもしれない。」と。
本書は2017年2月から4月まで西日本新聞に連載されていたもので、田尻さんの文才を見出した西日本新聞の編集者の眼力に感心する。
さらに新聞連載中に本にしないかと声をかけたのは里山社という出版社でしたが、熊本の出版社と思いきや発行所の住所は神奈川県川崎市となっている。
いい本というのは、こうして出来上がるのだという見本のような、人と人との出会いで生まれているのがよくわかる。
ひとつの話は2ページに収まる分量で、それでいてなんとも豊かな時間を共有できたと思える。
どの話から読んでもいい。田尻さんの文章は、何も強制しない。
どんなふうに思っていい。何故なら、田尻さんの文章は、水なのだから。さまざまに形をかえる。
幸福な時間を過ごせる一冊である。
(2022/07/06 投稿)

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