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 『中学生から知りたい ウクライナのこと』という本に、
 藤原辰史氏が「歴史がくりかえしてきた重要な問題のひとつ」として、
 当事者意識の減退と関心の低下をあげています。
 東日本大震災のような大きな災害でもそうですが、
 記憶が薄れていくことがよく問題になります。
 ましてや、77年前の戦争ともなれば、当時生きていた人もどんどん少なくなっています。
 吉村昭さんの初期の作品には太平洋戦争時の記録文学が多くありますが、
 それらを証言してくれていた人たちが少なくなって、その当時を舞台にした作品を書くことをやめたくらいです。
 大事なことは、記憶をつないでいくことです。
 その有効な手段として、文学作品があります。

 この『殉国 陸軍二等兵比嘉真一』は、吉村昭さんの作品の中でもかなり初期のものです。
 1967年に当初『殉国』というタイトルで刊行されています。
 その後改訂され、現在のタイトルになっています。
 舞台は太平洋戦争末期の沖縄。
 主人公の比嘉真一はたった14歳で急遽「陸軍二等兵」になった沖縄の少年兵です。
 立派な皇国の兵士として戦い、死んでいくことを願う少年ですが、
 アメリカ軍によりどんどん追い詰められていく姿を描いた長編小説です。

  

 戦争末期の沖縄戦の悲惨な戦いはよく語られますが、
 この作品も少年の眼を通して悲惨な様子が描かれています。
 その悲惨さは、執筆時にはまだ多くの語り部たちがいたことで作品になったのでしょう。
 しかし、今はこの作品を読むことでしか、当時のことを知るすべがありません。
 少なくとも、この作品を通して、いかに戦争が多くの無垢な命を犠牲にしたかを知ることが大事です。
 いつまでも、そして、もっと読まれるべき戦争文学のひとつです。

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