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01/12/2009    書評:親子で映画日和
プレゼント 書評こぼれ話
  
  高校時代から大学時代にかけて、
  私は「映画大好き」少年であり、青年でした。
  高校の頃は友人たちと学校が終わって試写会に行くのが楽しみでしたし、
  大学生の時には、「名画座」を何軒もはしごするのが日常でした。
  今回の本にも、その頃の映画館の様子が描かれています。
  著者の永千絵さんは1959年生まれですので、
  少し私の方が年上ですが、「同時代」を生きた匂いがあります。
  渋谷の映画街を描いた箇所などは、私自身よく通った街でしたから、
  懐かしかったです。
  名画座だった「全線座」という活字を見ただけで、
  わぁーっという感じになります。
  書評には「家族」の場面をメインに書いていますが、
  映画のそんな話もたくさん出てくる、
  素敵な一冊でした。

   親子で映画日和

  sai.wingpen  いやぁ、家族って本当にいいもんですね          矢印 bk1書評ページへ

 たまたま読んだ本が想像以上に面白かったという経験はありませんか。
 雑誌「スクリーン」でお馴染みの「近代映画社」が昨年創刊した「SCREEN新書」の一冊で、帯の「あるようでなかった、映画の新書です。」にひかれて手にしたのが、この本だった。「映画の新書」ということに興味をもっただけで、すでに刊行されているいくつかのラインナップのどれでもよかった。
 しかもどちらかといえば、親と子と映画といったテーマにも魅力を感じなかったのだが、この本は期待以上に面白かったというか、読むのがとまらなくなった。

 著者の永千絵さんは、「息子ふたり、ダンナひとり、猫と同居中」の映画エッセイスト。そして、あの永六輔さんの長女。
 だから、息子さんのお弁当に悪戦苦闘するごく普通の主婦のようでもあるし、父親六輔さんの薫陶を受けた独特な世界観(そして、それはすごくノーマルな考え方でもある)をもった女性でもある。
 しかも学生の頃から学校の行事よりも映画が好きで、「同じ映画は何度観ても泣けるという特技」があって、「映画が始まって5分で泣いた」(一体どんな映画だったのだろう)という記録まで持っている、映画が大好き女性なのである。

 そんな著者が書いたこの本は、映画評論ではなく「映画エッセイ」という体裁で、映画にまつわる家族の思い出や親と子の微妙な関係が、まるで良質のホームドラマを見ているように綴られている。
 特に、2002年に亡くなった母親との最後の日々を綴った「観に行くのがあたりまえだった『若草物語』」や、母親の死を契機にした死生観を書いた「生と死について考えさせてくれた『アザーズ』」などは、母親とたびたび映画館に足を運んだ長女(著者)なりの、肉親への訣別の仕方が描かれて、深く考えさせられる。
 冷酷だと思える心の割切りをする一方で、「母が死んで、年寄りを見る目が変わった。頑固だったり傲慢だったりする年寄りもたくさんいるけれど、母が重ねていくことのできなかった年を経てきた彼らが羨ましい」(55頁)と書く著者の目は涙に濡れながらも、澄んでいる。

 もし、映画評論家水野晴郎(2008年6月死去)さんが生きておられたら、こうおっしゃるにちがいない。
 「いやぁ、家族って本当にいいもんですね」
(2009/01/12 投稿)


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