10/28/2022 蜘蛛の巣(アガサ・クリスティー):書評「コミカルな死体隠し」

今回のアガサ・クリスティーの作品は、戯曲です。
『蜘蛛の巣』。
タイトルは今ひとつですが、
作品は楽しく仕上がっています。
こういう作品を書いている時のアガサ・クリスティーは
きっと自身も楽しんで書いているのではないかな。
いつもの霜月蒼さんの
『アガサ・クリスティー完全攻略』でも
★★★★の高評価。
解説の書き出しが、「キュートでファニーだ!」なんですから
読まずにいられない作品のひとつです。
私もこの評価には、大賛成です。
じゃあ、読もう。

「ミステリーの女王」と称されるアガサ・クリスティーはミステリー作家であることはいうまでもないが、劇作家としても評価は高い。
この『蜘蛛の巣』は、アガサが1957年に発表した戯曲で、原題も「Spider’s Web」となっている。
ただこのタイトルはあまり気にすることはない。ちょっとしたオシャレな言い回し、夫の妻への愛情表現ほどのこと。
もっともこの作品全体が、このタイトルのようなかわいくオシャレで、コミカルな出来といえる。
戯曲だから、まず舞台配置図の説明がある。
この作品の場合、見せどころは「消える死体」で、舞台もそれゆえに複雑な配置となっている。
アガサはその点も手抜かりはない。
ある日主人公の女主人の家に、夫の元妻の現在のやくざな男がやってくる。
あやしい動きをする男だが、誰かに殺されてしまう。
この死体をめぐって、登場する男三人のコミカルなやりとりが楽しい。
死体の始末どうすんだ? 隠してよ! そこじゃだめだろ・・・、みたいな。
そんな男たちを右往左往させるのが、この作品の主役といえる女主人。
どんな時代であれ、どんな場所であれ、かわいい女性には男たちはやさしいというか、いいなりになってしまう。
単にコミカルというだけではない。
犯人が狙っている高額なものとは何か、そういう謎解きも面白い。
ただそもそもの犯人探しは案外早くから検討がつくかもしれないが、この作品でアガサがもくろんでいたのは犯人探しではなく、男のかわいさのような気がした。
(2022/10/28 投稿)

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