12/08/2022 じい散歩(藤野 千夜) - おかしな家族だけれど、彼らはおかしいと思っていない

著者の簡単なプロフィールで
2020年に出た『じい散歩』が話題になったとあったので
読んでみた。
というのも、『団地のふたり』の読後感が気に入ったというのもあって、
藤野千夜さんの作品をまた読んでみたいと
思ったせいでもある。
『団地のふたり』の心地よさは
50歳になって独身の二人の同級生が
そういう生き方をとても楽しんでいることのそれといっていい。
しかも、彼女たちだけでなく、親たちも自然に受け止めているのも素敵で
こんなところに人間の本来のありかたが現れるのだろうと思った。

もっと驚く家族小説だ。
主人公は89歳になる新平。健康維持につとめ、散歩が日課で、
ふらりと建物を見たり、喫茶店でお茶したりしている。
若い頃の浮気癖はなくなったが、まだエロには興味がある。
妻の英子は88歳。やや認知症が出てきたようで、
新平の浮気を今でもしきりに疑っている。
彼らには三人の息子がいて、みんな50歳をすぎたあたり。
ところが、長男は引きこもり、次男は自称「長女」、三男は借金まみれ。
と、かなりおかしい家族だ。

新平の散歩の姿とともに描かれている。
おかしい家族であるはずなのに、
この家族のなんというおおらかなことか。
世間を気にすることなく、世間を見て歩く、その姿に
やっぱりこの作品にも、人間の本来のありかたが
見えるようであった。

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