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 先日発表された第168回芥川賞を『荒地の家族』で受賞した佐藤厚志さんは、
 仙台の現役の書店員でもあることで話題となった。
 その経歴を見ると、2017年に新潮新人賞を受賞し、
 その後この『象の皮膚』を2021年に発表し、三島由紀夫賞の候補となっている。
 『荒地の家族』はそのあとの作品だから、
 まだそんなに多くの作品を発表していない。

  

 今回の芥川賞受賞でも、佐藤さんの作品と東日本大震災の関係がよく報じられているが、
 この『象の皮膚』でも東日本大震災後まもなく営業再開した書店に押し寄せた
 人たちの姿がうまく描かれている。
 物語は、幼い頃からアトピーで苦しみ、友達ともうまく交われなかった五十嵐凛という女性が主人公。
 彼女は仙台駅前の書店の非正規社員として6年働いている。
 自分の肌のことで「心を自動販売機のように」して働き、
 ネットの仮想世界のアバターが彼氏である。
 本来なら彼女を支えるべき家族も何故か彼女を毛嫌いし、かなり悲惨な生活のはずなのに、
 どうしてだろう、
 五十嵐凛という女性は決してそんなに悲痛には見えない。
 それは、彼女の務める書店で働く先輩であったり同僚を描き方、
 あるいは書店に現れるクレーマーの数々の嫌がらせの様子の表現が
 生き生きと活写されているからだろう。
 つまりは、誰もがみんな「どっこい、生きている」のだ。

 だから、震災後書店に押し寄せたお客たちもまた、
 被災者であっても生の体現者であり、
 生きているからこその面白さを生み出している。
 
 こういう作品を読むと、
 芥川賞受賞作を早く読みたくなる。

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