02/01/2023 象の皮膚(佐藤 厚志) - 生きている姿がたくましい

仙台の現役の書店員でもあることで話題となった。
その経歴を見ると、2017年に新潮新人賞を受賞し、
その後この『象の皮膚』を2021年に発表し、三島由紀夫賞の候補となっている。
『荒地の家族』はそのあとの作品だから、
まだそんなに多くの作品を発表していない。

この『象の皮膚』でも東日本大震災後まもなく営業再開した書店に押し寄せた
人たちの姿がうまく描かれている。
物語は、幼い頃からアトピーで苦しみ、友達ともうまく交われなかった五十嵐凛という女性が主人公。
彼女は仙台駅前の書店の非正規社員として6年働いている。
自分の肌のことで「心を自動販売機のように」して働き、
ネットの仮想世界のアバターが彼氏である。
本来なら彼女を支えるべき家族も何故か彼女を毛嫌いし、かなり悲惨な生活のはずなのに、
どうしてだろう、
五十嵐凛という女性は決してそんなに悲痛には見えない。
それは、彼女の務める書店で働く先輩であったり同僚を描き方、
あるいは書店に現れるクレーマーの数々の嫌がらせの様子の表現が
生き生きと活写されているからだろう。
つまりは、誰もがみんな「どっこい、生きている」のだ。

被災者であっても生の体現者であり、
生きているからこその面白さを生み出している。

芥川賞受賞作を早く読みたくなる。

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