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 東日本大震災が起こった2011年、
 その大きな災害のおよそ一か月前の2月5日に、
 ひとりの女性が獄中で亡くなった。
 彼女の名は永田洋子(ひろこ)。
 連合赤軍のリーダーの一人で、1971年から72年にわたっての仲間へのリンチ殺人の罪で
 死刑判決が出ていたが、刑の執行ではなく、病気で亡くなっている。
 65歳だった。
 それから、3年後の2014年11月から2016年3月まで、
 雑誌「文藝春秋」に連載されたのが、
 桐野夏生の『夜の谷を行く』だった。

  

 この長編小説の主人公は
 永田たちが引き起こしたリンチ殺人の現場から逃げ出した
 元活動家の女性西田啓子。
 当時警察に逮捕され、彼女は5年間の服役を終え、
 その後は人目を避けるように暮らしている。
 そんな彼女が永田の死のニュースから
 まるで暗い裂け目をのぞくように当時のことと向き合うことになる。
 服役後、唯一交流していた妹とその娘だが、
 啓子の過去の事件を知ることで激しくののしられる。
 それは、そのあとに起こった東日本大震災の大きな揺れと
 まるで共鳴するかのように
 彼女の平凡だった暮らしを揺さぶっていく。

 永田やリンチ殺人で亡くなった女性たちの実名が書かれているが
 これはあくまでも小説である。
 おそらく桐野の綿密な取材もあるだろうが、
 むしろ2011年に起こった永田の死や東日本大震災が
 創作の発露となったように感じる。

 そして、何よりもこの長編小説の最後の瞬間に
 まるで一閃の衝撃をうけるはずだ。
 小説のすごさを体感できる問題作だ。

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