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プレゼント 書評こぼれ話

  正直にいうと、
  やっと読めた直木賞受賞作です。
  それは図書館で借りる多数の順番待ちということでもあるし、
  自分の中では佐藤正午さんという作家が
  直木賞というのが
  どうもしっくりこなかったこととも関連する。
  佐藤正午さんが直木賞を受賞したと聞いて
  とても驚いたのは私で、
  デビュー当時何冊か佐藤正午さんの作品を読んだことがあって
  まさか直木賞作家になるとは
  信じられなかった。
  受賞作である『月の満ち欠け』も
  純文学といってもいい出来に仕上がっていたから
  読んだあともなんだかしっくりこなかった。
  直木賞は新人賞ではなかったのかとつい頭をひねる
  そんな作品だろう。

  じゃあ、読もう。

  

sai.wingpen  直木賞の性格を揺るがす事件のような作品                   

 第157回直木賞受賞作。(2017年)
 佐藤正午さんが受賞されて、正直驚いた人も多かったのではないだろうか。
 何しろ佐藤さんといえば、『永遠の1/2』でデビューしたのが1983年。この作品で「すばる文学賞」を受賞した当時気鋭の新人作家だった。
 あれから30年以上経つ。その間も作品を書いてこなかった訳ではない作家だから、選考委員の一人浅田次郎委員のいう通り「熟練の作品」であり、「他の候補作とのちがいは相当に歴然」なのも、至極当然だろう。
 だからといって、何故この時に佐藤さんが受賞するのか、これは直木賞という文学賞の性格を余計に曖昧にした事件のように感じた。

 作品は「生まれかわり」をテーマにしているが、作品の長さを気にしなければ、内容的には芥川賞向きのような思えた。
 さらにいえば、これは多分一読者の偏りといっていいだろうが、村上春樹さんの初期の頃の文体にとてもよく似ていた。
 村上春樹さんが『風の歌を聴け』で「群像新人賞」を受賞したのが1979年だから、佐藤さんはほぼ同世代の作家といえる。
 時代の匂い、時代の風がよく似ているということだろう。

 選考委員の中には「後味が悪い」とか「不気味な作品」と選評に書く人もいたが、決してそんなことはなかった。
 ただ、2016年公開された新海誠監督の『君の名は。』に、あれは時空を超えた「入れ替り」だが、とてもよく似ていた。
 つまり、「生まれかわり」であろうが、「入れ替り」であろうが、愛する人とはどこかでつながっているということだろう。
  
(2023/03/29 投稿)

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