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 砂原浩太朗さんは、2021年に発表した『高瀬庄左衛門御留書』で高い評価を得、
 翌年には『黛家の兄弟』で第35回山本周五郎賞を受賞した、
 今もっとも注目されている時代小説作家といっていい。
 砂原さんの魅力はその抑制された文章と静謐な世界観にあるといっていい。
 まだ作品数が多くないので、これから先どのような作品をものにするのか、
 期待値も大きい。

  

 そんな砂原さんが2021年の終わりから雑誌「オール讀物」に不定期連載したのが、
 この『藩邸差配役日日控』である。
 評判となった『高瀬庄左衛門御留書』が漢字のみを連ねたタイトルだったから、
 その験担ぎということもあったのだろうか、
 今回も漢字だけを連ねたタイトルになっている。
 5つの短編で出来上がっているから、連作集ではあるが、 、
 やはり大きな線が一本つながっているので、長編として読んでもいい。

 主人公の里村五郎兵衛は、神宮寺藩の江戸藩邸の差配役の頭である。
 差配役というのは、
 藩邸の管理を中心に殿の身辺から邸の雑役に至るまで目を配る要の役目で、
 現代でいえば会社の総務・秘書室みたいな役目だろうか。
 里村には二人の娘がいるが、妻を若くして亡くしている。
 作品の大きな線というのは、里村の家族に関係することだが、
 それは最後の作品「秋江賦」で明らかになる。

 砂原さんへの期待が大きいせいだが、
 この作品はどちらかといえば平凡に見えるかもしれない。
 あるいは、作品の尺が足りないせいかもしれない。
 主人公を取り巻く人たちへの踏み込みが足りなくて、
 それが作品を平凡にしているように思える。
 もっとも、まだ期待の作家であることには違いないが。

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