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プレゼント 書評こぼれ話

  昨年の初秋の頃、
  映像をしていた友人から
  井上ひさしさんで何か撮れないだろうかと
  訊かれたことがある。
  あまりうまく答えられなかったが、
  友人は井上ひさしさんの農業への関心と
  東南アジアの劇的な空間をつなげて
  作品にできないかと考えていたようである。
  映像にする際には
  井上ひさしさんのインタビューも必要だから
  「井上ひさしさんに会えるなんて、すごいな」と
  内心うらやましくもあった。
  その後、その話は立ち消えになったようだが
  井上ひさしさんの体調不良も原因だったのかもしれない。
  今日紹介する『父と暮せば』という戯曲は
  宮沢りえさんと原田芳雄さん主演で
  映画化(黒木和雄監督作品)もされている。
  この映画もいい。
  今回井上ひさしさんの戯曲として初めて読んだが、
  書評のなかで少し紹介した
  前口上がいい。
  もう井上ひさしさんがいないなんて
  まだ信じられない。

  じゃあ、読もう。  

父と暮せば父と暮せば
(1998/05)
井上 ひさし

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sai.wingpen  幕はおりたが-追悼・井上ひさし                     矢印 bk1書評ページへ

 劇作家、作家の井上ひさしさんが亡くなった。
 どのような文豪であれ、やがては命がつき、作品だけが永遠の生命をもつのだが、井上さんの場合、まだまだ趣向をこらした新しい作品がでてくるものとばかり思っていただけに、フイであった。
 突然、幕が下りた。

 一時期井上さんの戯曲を何作も読みつづけたことがある。『きらめく星座』、『泣き虫なまいき石川啄木』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『人間合格』・・・。
 本物の舞台を観ないまま戯曲だけで語ることは井上さんも望まなかっただろうが、(この『父と暮らせば』のあとがきに井上さんは「劇場の機知」という短文を掲載している。そのなかで、「舞台でしかつくることのできない空間や時間」にいかに苦心していたかを書いている。この『父と暮らせば』は登場人物たちの広島弁がとても魅力なのだが、井上さんがこの作品で悩んだのはそれよりも主人公の娘の分身としての父親であったという)それでも井上戯曲はおかしく、切なく、それでいて明るい言葉の空間を読む者にさし示してくれた。

 井上ひさしという作家を後世の人たちがどのように評価するのかわからないが、この作品に寄り添って書けば、「人間のかなしいかったこと、たのしいかったこと、それを伝えるんが」仕事だった人だったのではないか。
 本作はヒロシマの原爆がもたらした悲しみを戯曲にしたものだが、「あの地獄を知っていながら、「知らないふり」することは、なににもまして罪深いことだと考えるから書くのである」と書いた井上さんは、小説や戯曲を通して、「伝える」ことをなりわいとした言霊のような人であった。

 井上ひさしという人の幕はおりたが、きっといつかふたたび誰かが「伝える」ために幕をあげる。
 そのことを井上さんは楽しみにしているだろう。

 合掌。
  
(2010/04/13 投稿)

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