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プレゼント 書評こぼれ話

  今回の第170回芥川賞受賞作東京都同情塔』を書いた
  九段理江さんの名前を聞いて、
  全然知らない作家だと思っていましたが、
  ふと、あれ? もしかしてこの人の作品を
  読んだことがあることを思い出しました。
  それが『School girl』という作品で
  2022年4月13日にこのブログで紹介していました。
  その時の書評タイトルが「女性を描ける作家」。
  では、今回の受賞作でもそうなのかというと
  確かに主人公は女性建築家ですが
  「女性を描ける」とまでいっていいかどうか、
  それより前面に近未来感の方が強い作品です。
  読後前には生成AIの話題などが先行して
  とっつきにくい感じがしましたが、
  実際にはそうではありませんでした。

  じゃあ、読もう。

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sai.wingpen  この小説の読み方                   

 第170回芥川賞受賞作。(2024年)
 なんといっても、この作品の背景設定が秀逸である。
 今ではほとんど記憶にも残っていない2021年に開催された東京オリンピック。その遠い記憶の中に、国立競技場の設計問題で一度は採用されかかったザハ・ハディド案があったことを逆手にとって、この作品では彼女の設計した国立競技場が建っているという設定である。
 もうその時点で、作者九段理江さんの勝利といえるだろう。
 さらに、「東京都同情塔」というタイトルの、韻のいい言葉の、それでいて不気味さは、実はこの塔が「新宿御苑に新しく立つ刑務所」の名称だというのだか、なんともいいしれない緊張感をもたらす近未来小説でもある。

 これらの虚構の建物の間に立つのは、「東京都同情塔」の設計を行った女性建築家であるが、
 彼女がこぼし続ける言葉は、これらの建造物に匹敵するような言葉の氾濫である。
 溢れる続ける言葉の整理のために、彼女が親しくする美青年が必要だったようにも思えるし、この美青年こそ、今回の受賞作で話題となった生成AIの姿にも見える。

 時に難解にも感じるこの作品ですが、芥川賞選考委員の「選評」を読んで、すっきり入ってきたのは川上弘美委員のこんな言葉だった。
 「作者は正解をだしてほしいのではないからです。作者はたぶん、ただ、考えてほしいのです。作者と違う考えでもいいし、いっそのことまったく関係のないことを考えるのでもいい。でも、考えてみて、と」。
 この言葉をたよりにしてこの小説を読むと、随分たすかるはずだ。
  
(2024/02/29 投稿)

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