fc2ブログ
 オンライン書店ビーケーワン
 他のオンライン書店、たとえばアマゾンとかの違いは
 レビューという形ではなく、
 書評という形式をとっていることでしょうか。
 特にbk1書店で本を購入しなくても
 書評は投稿できます。
 文字数制限は今は3000字。
 大長編? 書評も投稿可能です。
 もちろんネタばれとか、極端に短いものとか、誹謗中傷は
 ダメです。
 編集部の人がきちんと読んでいるようです。

 投稿した次の日には
 基本的には掲載されます。
 掲載されたときには、
 「この書評をいいと思った・・・はい・いいえ」という
 評価アンケートみたいなものがはいります。

 私の書評のなかで、
 この評価アンケートの「はい」が61票もはいった作品が
 片山恭一さんの『世界の中心で、愛をさけぶ』です。
 2003年7月22日の投稿です。
 よく調べていませんが、
 おそらく私の書評のなかでもっとも支持された作品だと思います。
 もっとも私の書評がよかったというより、
 それだけこの『世界の中心で、愛をさけぶ』が読まれていたと
 いうことでしょう。
 この書評のなかで書いた甥っ子のD君ですが、
 一浪してこの春、大学生になりました。
 この時、彼がこの『世界の中心で、愛をさけぶ』を読んだのか
 どうかはわかりませんが、
 案外大学生になった今、読むのもいいのではないでしょうか。

 この年(2003年)の冬、
 新井満さんの『千の風になって』の書評(2003.12.23)で
 続編のような「冬はダイヤのように-D君の課題図書、冬。」
 書いています。
 2003年の投稿数、77件

世界の中心で、愛をさけぶ世界の中心で、愛をさけぶ
(2001/03)
片山 恭一

商品詳細を見る

sai.wingpen  悲しくても乗り越えないといけないこと−D君の課題図書          矢印 bk1書評ページへ

 D君へ。
 今年は冷たくて長い梅雨がいつまでも続きます。山間の、君の住む小さな町もどんよりとした雨雲が張りついたままです。中学生になって初めての夏休みを迎えようとしていた終業式の日の夜、君のお父さんは突然亡くなりました。君はその悲しみも今後の不安も、まだ実感する余裕すらないかもしれないですね。でも、いつか梅雨空が消え去って夏の日差しが差し込むように、君もお父さんのいない深い悲しみにふいに襲われるかもしれません。

 でも、D君、考えてみて下さい。(人の死は多くの人に考えるということを教えてくれる尊厳なものです)その時、君が感じる悲しみは誰にも理解できない程深いものでしょう。でも、君のお父さんが死の直前に感じただろう悲しみはどれほどつらいものだったでしょうか。お父さんはまだ四十三歳でした。君は背丈が大きくなったといっても、まだ中学一年になったばかりです。お父さんはこれから君と過ごせただろう日々のこと、君が素敵な彼女を連れて歩いたり進学や就職に悩んだり、やがて美しい人と結婚するだろうその日に、父親として君のそばにいてあげれない悔しさにどんなにつらい想いだったことでしょう。

 「好きな人を亡くすことは、なぜ辛いのだろうか」。片山恭一の「世界の中心で、愛をさけぶ」は恋人の死をめぐっての、高校生の純粋な愛の世界を描いた小説です。中学生の君にはまだわかりにくい作品かもしれません。あるいは今の君にはつらい内容かもしれません。でも、悲しくても乗り越えないといけないことがいっぱいあるのだということを君にもわかってもらいたいし、乗り越えるということ自体が今の君の大きな課題だと思います。悲しみから逃げてはいけません。悲しみは乗り越えないといけないのです。

 「ずっと以前になくしたものが、ある朝ふと、もと置いた場所に見つかることがある。きれいな、昔あったままの姿で。なくしたときよりも、かえって新しく見えたりする。まるで誰か知らない人が、大切にしまってくれていたかのように」(205頁)

 D君。君もいつかお父さんの死が君に教えようとした大切なことをわかる日がくるにちがいありません。そして、それがいつもより長い梅雨の年の、中学生最初の夏休みのはじまりの日だったことを、悲しみの想いを封じ込めてなつかしく思い出す日が来るでしょう。
  
(2003/07/22 投稿)

  芽 「ブログランキング」に参加しています。
     応援よろしくお願いします。
     (↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)
 
    にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

レビュープラス
Secret

TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/604-c2157b03