06/12/2010 書評でふりかえるbk1書店と私 - 第1回 2002年、bk1書店と出会った頃

10年を迎えるそうです。
いつもお世話になっているbk1書店なので、
書評を読みながら、私とbk1書店の思い出を
振り返ってみたいと思います。

2000年7月11日にサービスを開始したそうですが、
私がbk1書店と出あったのは、2002年4月。
サービス開始から2年になろうというところです。
このブログにも書いたことがありますが、
もともと私はワープロを使って「読書ノート」を書いていました。
書き始めたのは、1989年ですから、もう20年以上前になります。
時代はまだパソコンよりもワープロ全盛でした。
親指シフトのワープロ使った人も多いと思いますが、
そんな時代です。
2台使ったでしょうか。
いよいよ2000年にはいって、ワープロ専用機ではなく
パソコンが家庭にも普及し始めた頃です。
まだまだパソコンで「読書ノート」のシートを作る自信もありませんでしたし、
ブログなんていうのもなかったのではないでしょうか。
その当時、ブログを知っていたら、
bk1書店には出会えなかったかもしれませんね。

探していました。
その時、見つけたのがbk1書店でした。
書評の投稿を募集しているという内容だったと思います。
しかも投稿すると、何ポイントか、本が購入できる特典が付与される
ということだったと思います。
(ちなみに今はこのサービスはありません)
そして、初めて投稿したのが、
川上弘美さんの『センセイの鞄』(2002.4.27投稿)。
(残念ながら、この作品をはじめ当時の頃の書評は
今のbk1書店では全文を読むことができません)
この時使ったハンドルネームが「夏の雨」です。
このハンドルネームは今でもbk1書店への投稿には使っていますが、
宮本輝さんの『朝の歓び』という作品の一節、
「あなたが春の風のように微笑むならば、私は夏の雨になって訪れましょう」から
とったものです。
自分の文章が
活字となってインターネットに掲載されるというのは
今もそうですが、
とてもわくわくします。

個人的な事情をまぜながら、本の紹介や感想を書いていることが
よくあります。
おかげで、日記風に読み返すこともできます。
(もともと、私の「読書ノート」はそのようにして書いていました)
2002年11月24日に投稿した同じ川上弘美さんの
『あるようなないような』という本の書評を読むと、
あの頃の私が浮かびあがってきます。
それができるのも、bk1書店のおかげかもしれません。
![]() | あるようなないような (1999/11) 川上 弘美 商品詳細を見る |


十一月も終わりに近づくと、背中をとんとんと押されているように慌ただしくなる。街にクリスマスツリーが何本もにょきにょきと立ち並び、山下達郎の切ないメロディが流れる。今年もあとわずか。今年もきつかったなあと思ったり、何も変わらないやとため息をついたり。そして、今年の一〇大ニュースの投票が始まったりする…。
今年。年明け早々、生まれて初めての入院をした。大腸にポリープが、ふたつ出来ていた。何人かの人にそのことを云うと、よくできるんだよと澄ました顔で反応されるのがこそばゆい感じだった。なにしろこちらは、生まれて初めての入院なのだ。真剣に入院の支度をした。ちょうど明日から修学旅行に行く小学生みたいな気分である。「うたのしおり」の代わりに、川上弘美の本を二冊、パジャマの下に入れた。「神様」と「おめでとう」。その時は気にしなかったが、今からすると入院するのにふさわしい書名であった。
病室に一〇日いた。昼はそうでもないが、夜になるとじわじわと寂寥感が広がってきた。これが入院というものかと、すこし悲しくもあった。そんな僕に川上弘美の文章はほかほかした日溜りのようであった。四角ではなく丸いような。フロージングではなく畳のような。夜ではなく昼、そう夕暮れが近い冬の午後三時四〇分のような。そこだけが暖かい幸福な時間だった。同室のカーテンがひかれたもう一人のベッドから、携帯電話でメールしている淋しい音がカチカチとした。
この本は九九年に刊行された川上弘美の、第一エッセイ集の文庫本である。彼女の文章を読むと、あの病室の淋しい音を思い出す。あの音は自分の存在を世界に伝えようとしていたにちがいない。川上弘美も、そう感じる瞬間(とき)があったはずだ。「時が過ぎて、わたしの文章の癖みたいなものも多少変わって、今読むと気恥ずかしいようなところもあるのですが、あの頃の空気がなつかしくもあります」(文庫判のためのあとがき)。
生まれて初めての入院の間に、四十何回めかの誕生日を迎えた。今年もあと一ヶ月となったが、あの病室の空気がなつかしくもあります。
(2002/11/24 投稿)

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


レビュープラス
TrackBackURL
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/608-2a08ba4d
→http://hontasu.blog49.fc2.com/tb.php/608-2a08ba4d
この記事は、オンライン書店ビーケーワン 書評の鉄人 夏の雨さんに
インスパイアされ、さっそくベンチマーク(=真似っこ)させて
いただいたものです。
夏の雨さんのブログ 本のブログ ほんたす
書評でふりかえるbk1書店と私
おめでとうございます
1999年...
□□ 本のこと あれこれ □□ 2010/07/03 Sat 06:03
| Home |