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 2007年というのは
 ある意味私にとっては重要な年になりました。
 私が本に親しみだしてから、
 それがいくつの頃かはさだかではありませんが、
 もっとも本に接するのが少なかったのが
 この年になってしまったからです。

 この年、
 オンライン書店ビーケーワンに投稿したのが
 わずか5冊
 実際にはもう少し読んでいましたが、
 文章にすることはなかなかできませんでした。
 今日紹介する山口瞳さんの『「男性自身」傑作選』の
 書評のタイトルが「読む訓練」というのも
 今から思えば、
 読めないこと書けないことの苛立ちがあったと
 思います。

 人がストレスを発散させる方法は
 いくつもあると思います。
 典型的なのはお酒。
 あるいはショッピングという人もいます。
 私は本がストレス解消でもありました。
 嫌なことがあっても、
 本を読むことでそのことを忘れられる。
 別の世界に遊ぶことができますものね。
 だから、仕事が大変だとか
 生活が不規則だとか(この年、私は単身赴任をしていました)
 そういうことで、本が読めなくなることはなかった。

 たぶん、それとは逆に
 この年は色々な面で充実していたのかもしれません。
 生活そのものが一篇の物語のような
 ものだったのかも。
 それでも、本を読めない苛立ちは
 あったと思います。
 やはり、そういう生活は自分という個には
 なじまない。
 じわじわとそう思うようになっていたんだと思います。

 そして、私は翌2008年、仕事をやめることにしました。

山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)
(2003/05)
山口 瞳

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sai.wingpen  読む訓練                     矢印 bk1書評ページへ

 最近本が読めない。
 これは、イタい。長編どころか短編さえも読めない。仕事が忙しくなっているのは事実だが、新幹線や飛行機といった移動中でも読めなくなっている。以前神戸の大震災の時にもそんな経験をしたが、それ以外は本を読むことで仕事の悩みだとか人間関係のごちゃごちゃとかをなんとか解消してきたはずなのに、ここにきてどうしたことか。
 何故本が読めないのか。第一に本を読むことが面白くない。本はきちんといつもと変わらず、いっぱいいいことを云っているはずなのに読み手である自分自身が反応しない。本に対して失礼だ。だから、何冊も途中で頁を閉じた。どのようにして本を読んでいいのか、戸惑っている。どうも本の読み方を忘れてしまったようだ。焦った。焦ったけれど、本を開いても心がほどけていかないのだからどうしようもない。これは人生の危機である。おおげさでなく。
 その時、もしかして山口瞳なら読めるかと思った。週刊誌の読み物程度だったらなんとか読めていたので、週刊新潮に掲載されていた山口の『男性自身』なら読めるかもしれない。恐るおそるである。それに山口が元サラリーマンだったことも、山口ならと思った理由の一つだ。考えてみれば仕事は面白い。この歳になっていうのもおかしいが、仕事は苦痛ではない。(若い頃は嫌で嫌で仕方がなかった。人生の半ばを過ぎた頃から、もしかして仕事っていうのは面白いものかもしれないと思い出した。だから言うのではないが、若い諸君、遊びだけではいけない。仕事もがんばりなさい)そのあたりの事情が、山口の作品から感化されるかもしれない、と思った。
 結果的には読了した。なんだ、読めるじゃないか、と思った。人生の先輩にちょっと叱られた感じさえした。「人生は短い。あっというまに過ぎてゆく。しかし、いま目の前にいる電車にどうしても乗らなければならないというほどに短くない」(245頁)山口を読んでよかった。でも、まだ恐る恐るである。
  
(2007/03/12 投稿)

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