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 いよいよ明日、7月11日、
 オンライン書店ビーケーワン10周年を迎えます。

  おめでとうございます。

 この連載? も今回が最後です。
 2008年12月にこのブログを開設して、
 今はこのブログに掲載した書評はbk1書店にも投稿しています。
 bk1書店への投稿は、
 まだ「夏の雨」というハンドルネームを使っています。

 本を読まない人が少ない、減っているとよく耳にします。
 しかし、本好きの人はまちがいなくいます。
 そんな本好きの人に伝えたいことは、
 本は読むだけでなく、そのときどきのことを書き残してくださいと
 いうことです。
 本との出会いは一回きりかもしれません。
 そして、そのときのあなたも一回きりのあなたです。
 再読は昔のあなたに出会うことではなく、
 あたらしいあなたを発見することです。
 だから、読書ノートはとてもたいせつです。

 書評にこだわることはありません。
 あなた自身のメモだって構わないのではないでしょうか。
 そのうち、きっと誰かに伝えたい、
 そういう想いがでてきます。
 そんなとき、bk1書店に投稿すればいいのです。

 あなたが明日の「書評の鉄人」になることを、
 そして、bk1書店がこれから先も多くの本好きたちで
 にぎわうことを祈っています。

 今日は川上弘美さんの『大好きな本』の書評を
 掲載します。
 2008年に書いた書評ですが、
 私の書評に対する考えがよくでている作品かと思います。

大好きな本 川上弘美書評集大好きな本 川上弘美書評集
(2007/09/07)
川上 弘美

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sai.wingpen  明日に架ける橋                     矢印 bk1書評ページへ

 書評とは何だろう、って考える。
 それを書いた人にとっては(本を読んだという)過去の経験であり、それを読んだ人にとっては(本を読むという)未来への招待みたいなものだ。
 つまり、昨日であり、明日でもあるんだ、書評って。
 もちろん、それを読んでいる今もある訳だから、昔観たイタリア映画みたいに「昨日・今日・明日」と言い表せるかもしれない。
 もう少し素敵な表現をすれば、書評とは「明日に架ける橋」ともいえる。(懐かしいなぁ、「明日に架ける橋」って。サイモン&ガーファンクルの、1970年の名曲です。ちょっとその雰囲気のまま、この書評が書ければいいのですが)

 本書は、作家川上弘美さんの「初めての書評集」である。
 だから、この書評は書評を集めた本を書評しているわけで、「明日に架ける橋」がふたつも架かった、とても魅力にあふれた構図になるはずだ。
 しかし、見方をかえれば、先頭で渡されたリレーのバトンを、次の走者がばたばたして転んでしまうこともあるのだから、そう単純にはいかない。
 でも、この「本を勧めたい、という気持ちは」「強くあるから」、いい橋が架けられればいいのだが。

 この本で紹介されている本の数は144冊にのぼる。
 新聞の書評欄や文庫本の解説として書かれたもので、さすがにこれだけの書評を集めると単行本で400頁超の大部になる。さしずめ長編小説を読むようなものだ。
 もちろん、ひとつひとつは短文(特に新聞に掲載されたものは短い)なのだが、頁数だけでなく、気分的には心地よい長編小説を読んだ感じである。しかも、極めて川上弘美的な。
 新聞の書評欄というのは大概面白くないものだが(それは本の選定にも問題があるような気がする)、川上弘美さんが書かれた書評はすこぶる面白かった。勧めたいという性根がちがう、とでもいえばいいのだろうか。

 「私は少しびくびくしながら読んだ」(紅一点論)
 「いつも思うのだが、なぜ多くの人は恋愛などというしちめんどくさいことをするのか」(机の上で飼える小さな生き物)
 「ううううう、とつぶやきながら読みおわった」(兄帰る)
 「実を言えば、小説を読むとき、はんぶんくらいの場合は、びくびくしている」(停電の夜に)
 こういう言葉で書かれた書評(もちろんすべてがそうであるわけでもないが)の、書き手の心にそった豊穣な言葉のつむぎの、(毛糸の玉の感触を楽しみながらセーターを編んでいくような文章とでもいうか)なんという暖かさだろう。
 それは、彼女の創作群にもつながる、川上弘美さんがもっているひとつの世界観かもしれない。

 サイモン&ガーファンクルの曲の最後はこうだ。

 「荒れた海にかかる橋のように/君の心に安らぎを与えよう」。

 やはり、書評とは「明日に架ける橋」だ。
 少なくとも、川上弘美さんの書評はそうだ。そして、本を読むってことは素晴らしいということを堪能してもらいたい。
 そう思う、一冊である。
(2008/05/04 投稿)

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