07/10/2010 書評でふりかえるbk1書店と私 最終回 未来へ

オンライン書店ビーケーワンは10周年を迎えます。
おめでとうございます。
この連載? も今回が最後です。
2008年12月にこのブログを開設して、
今はこのブログに掲載した書評はbk1書店にも投稿しています。
bk1書店への投稿は、
まだ「夏の雨」というハンドルネームを使っています。

しかし、本好きの人はまちがいなくいます。
そんな本好きの人に伝えたいことは、
本は読むだけでなく、そのときどきのことを書き残してくださいと
いうことです。
本との出会いは一回きりかもしれません。
そして、そのときのあなたも一回きりのあなたです。
再読は昔のあなたに出会うことではなく、
あたらしいあなたを発見することです。
だから、読書ノートはとてもたいせつです。

あなた自身のメモだって構わないのではないでしょうか。
そのうち、きっと誰かに伝えたい、
そういう想いがでてきます。
そんなとき、bk1書店に投稿すればいいのです。

そして、bk1書店がこれから先も多くの本好きたちで
にぎわうことを祈っています。

掲載します。
2008年に書いた書評ですが、
私の書評に対する考えがよくでている作品かと思います。
![]() | 大好きな本 川上弘美書評集 (2007/09/07) 川上 弘美 商品詳細を見る |


書評とは何だろう、って考える。
それを書いた人にとっては(本を読んだという)過去の経験であり、それを読んだ人にとっては(本を読むという)未来への招待みたいなものだ。
つまり、昨日であり、明日でもあるんだ、書評って。
もちろん、それを読んでいる今もある訳だから、昔観たイタリア映画みたいに「昨日・今日・明日」と言い表せるかもしれない。
もう少し素敵な表現をすれば、書評とは「明日に架ける橋」ともいえる。(懐かしいなぁ、「明日に架ける橋」って。サイモン&ガーファンクルの、1970年の名曲です。ちょっとその雰囲気のまま、この書評が書ければいいのですが)
本書は、作家川上弘美さんの「初めての書評集」である。
だから、この書評は書評を集めた本を書評しているわけで、「明日に架ける橋」がふたつも架かった、とても魅力にあふれた構図になるはずだ。
しかし、見方をかえれば、先頭で渡されたリレーのバトンを、次の走者がばたばたして転んでしまうこともあるのだから、そう単純にはいかない。
でも、この「本を勧めたい、という気持ちは」「強くあるから」、いい橋が架けられればいいのだが。
この本で紹介されている本の数は144冊にのぼる。
新聞の書評欄や文庫本の解説として書かれたもので、さすがにこれだけの書評を集めると単行本で400頁超の大部になる。さしずめ長編小説を読むようなものだ。
もちろん、ひとつひとつは短文(特に新聞に掲載されたものは短い)なのだが、頁数だけでなく、気分的には心地よい長編小説を読んだ感じである。しかも、極めて川上弘美的な。
新聞の書評欄というのは大概面白くないものだが(それは本の選定にも問題があるような気がする)、川上弘美さんが書かれた書評はすこぶる面白かった。勧めたいという性根がちがう、とでもいえばいいのだろうか。
「私は少しびくびくしながら読んだ」(紅一点論)
「いつも思うのだが、なぜ多くの人は恋愛などというしちめんどくさいことをするのか」(机の上で飼える小さな生き物)
「ううううう、とつぶやきながら読みおわった」(兄帰る)
「実を言えば、小説を読むとき、はんぶんくらいの場合は、びくびくしている」(停電の夜に)
こういう言葉で書かれた書評(もちろんすべてがそうであるわけでもないが)の、書き手の心にそった豊穣な言葉のつむぎの、(毛糸の玉の感触を楽しみながらセーターを編んでいくような文章とでもいうか)なんという暖かさだろう。
それは、彼女の創作群にもつながる、川上弘美さんがもっているひとつの世界観かもしれない。
サイモン&ガーファンクルの曲の最後はこうだ。
「荒れた海にかかる橋のように/君の心に安らぎを与えよう」。
やはり、書評とは「明日に架ける橋」だ。
少なくとも、川上弘美さんの書評はそうだ。そして、本を読むってことは素晴らしいということを堪能してもらいたい。
そう思う、一冊である。
(2008/05/04 投稿)

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サムシングブルー
2009年大晦日のブログのなかで
「一年間で243冊読んだ」 というコメントを読み
私も、と思い立ち
2010年元旦から読書ノートをつけ始めました。
春ぐらいまでは順調でしたが 今では・・・。
今日のコメントに
「あたらしいあなたを発見するために 読書ノートはとてもたいせつです。
書評にこだわることはありません。」 とありました。
なぜか 書評を書けなくなってしまった私に
気づきをいただきました。
本を読んで書評を書くことが 目的ではなく
自分と対話することが 大事なのだということを。
書評は 「明日に架ける橋」
まさにそうですね。
「一年間で243冊読んだ」 というコメントを読み
私も、と思い立ち
2010年元旦から読書ノートをつけ始めました。
春ぐらいまでは順調でしたが 今では・・・。
今日のコメントに
「あたらしいあなたを発見するために 読書ノートはとてもたいせつです。
書評にこだわることはありません。」 とありました。
なぜか 書評を書けなくなってしまった私に
気づきをいただきました。
本を読んで書評を書くことが 目的ではなく
自分と対話することが 大事なのだということを。
書評は 「明日に架ける橋」
まさにそうですね。
2010/07/10 Sat URL [ Edit ]
夏の雨
サムシングブルーさん
いつもコメントありがとうございます。
本を読むこと、そして書評を書くこと、
それらはやはり何よりも
自分というものを見つけるということなんだと
思っています。
いつまでたっても
私はその旅をつづけるでしょうね。
これからも、
おつきあいください。
いつもコメントありがとうございます。
本を読むこと、そして書評を書くこと、
それらはやはり何よりも
自分というものを見つけるということなんだと
思っています。
いつまでたっても
私はその旅をつづけるでしょうね。
これからも、
おつきあいください。
2010/07/10 Sat URL [ Edit ]
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