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01/27/2009    書評:彼女について
プレゼント 書評こぼれ話

  こういう最後のドンデン返しがある物語の書評を書くのは難しい。
  結末を書くと「ネタバレ」になるし、
  一番おいしいところを書かずに書評を書いても、
  読んだ人には「なんのこっちゃ」ということになりますよね。
  よしもとばななさんの、最新作だというのに、
  bk1書店でも誰も「書評」を書いていないのは、そういうことかな。
  今回の書評を読んで、「なんのこっちゃ」と思った人は、
  ぜひ実際に本を読んでみて下さい。
  ばななさんはこの物語の、最後にこう書いています。
     「ものごとは最後の最後まで、なにがどうなるかわからないものだなあと
      私は思った

  たぶん、ばななさん、にやりとしてここ書いたんだろうな。
  
彼女について彼女について
(2008/11/13)
よしもと ばなな

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sai.wingpen  彼女をさがして                     矢印 bk1書評ページへ

 わたし、一人称。あなた、二人称。彼または彼女、三人称。
 子どもの頃、そう習った。
 「私が昇一と最後に会ったのはふたりが小学校に上がる直前くらいのときだったろうか」という書き出しで始まるよしもとばななのこの本は、一人称の小説だが、題名は『彼女について』。
 この彼女って誰なの? と、読んでいる途中で随分気になった。
 物語の最後で、この「彼女」の正体がわかるはず(きっと)だが、この物語が、母親が父親を殺してしまうという悲惨な過去を持つ由美子という「私」の一人称の物語ではなく、すっと視線をいれかえると、昇一という優しい青年の物語に見えてしまうあたり、不思議な構造をもった物語といえる。
 由美子と昇一は、母親が双子の姉妹でしかも魔女(といっても、「特殊な宗教みたいなものの教祖の娘」で、ホウキで空を飛んだりはしない)だという、いとこ同士。
 由美子が久しぶりに東京に戻っていた「秋なかばのある夕方」、昇一が訪ねてきて、彼の母親が昇一に由美子を助けるように言い残して、亡くなったことを告げる。
 由美子は母親が起こした凄惨な事件の真相がわからないし、そのあとの自身の記憶さえあいまいなままなのだ。由美子は、だから、こう思っている。
 「私の淋しさは、確かにあったものがなくなったというものだから、きっとそれはどんな人生でも同じことなのだろうと思う。なにもなくさずに生きられる人はいない」(67頁)と。
 そんな由美子を、昇一の母は助けるように息子に託したのだ。
 そこから、二人の、由美子のなくなった日々をさがす旅が始める。
 そのなかで、由美子たちの母親の関係や由美子をうつろにした事件のようすが少しずつ見えてくる。そして、最後に由美子は気づいてしまうのだ・・・。

 彼らの旅をもう一度辿れば、謎解きのような文章が入念に仕掛けられていることに気がつくはずだ。 よしもとばななの巧みさである。
 そして、謎がとけてしまったあとには、これらの言葉こそ、やさしい魔法のようにそこにおかれていることに気づく。
 なくしたものをさがす旅の果てに、「彼女について」の本当の意味に、読者もたどりつくにちがいない。
  
(2009/01/27 投稿)

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