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01/31/2009    書評:クマよ
プレゼント 書評こぼれ話

  このブログでたびたび紹介してきました、
  NHKBS2の「私の冊 日本の100」で視聴者の「私の一冊」を
  募集していました。
  そこで、はたと悩みました。
  たくさん本を読んできましたが、
  私にとって「これが私の一冊だ」といえる本って何だろうって。
  子供の頃に読んだ本、
  青春時代に読んだ本、(やはりこの頃読んだ本が印象深いですね)
  働き出してから読んだ本、
  子供ができて娘たちと読んだ本、
  そして、今。
  そんなことでずっと自分の一冊が見つかりませんでした。
  ある時、ふと今回書評を書いたこの本のことを思い出しました。
  そうなんだ。
  私はこの本にめぐりあって、この本に癒され、
  この本のままに抱きとめられたんだと思いました。
    いつか おまえに 会いたかった
  という思いは、
    いつか おまえに また会うよ
  という未来への希望をもっています。
  そう。
  星野道夫さんのこの本こそ、私の一冊。

  
クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)クマよ (たくさんのふしぎ傑作集)
(1999/10)
星野 道夫

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sai.wingpen  私の一冊         

 「いつか おまえに 会いたかった」
 グリズリーの静かな表情をとらえた一枚の写真とともに、この言葉があります。
 私の一冊は、アラスカの自然と動物たちを撮り続けた写真家星野道夫さんの『クマよ』です。
 本を開くと最初に出会うこの言葉に深く心を打たれました。
 何千語、何万語という言葉で紡ぎ出される思いの世界を、星野さんは、たった十三文字で言い切ってしまわれた。そのことの凄さもまた胸にせまってくる十三文字です。
 つづくページにこうあります。「あるとき ふしぎな体験をした 町の中で ふと おまえの存在を 感じたんだ」。
 星野さんは若い頃本当にそう思われました。私たち人間とくまは全くちがう世界にいるのではなくて、同じ時間を過ごし、同じ空間にいるのだと。だから、星野さんはクマに会いたいと思います。そして、たどりついたのがアラスカでした。
 星野さんのどの文章でもそうですが、遠く離れていても、そしてそれが人間であれ動物であれ、相手のことを深く感じ合えるという思いは、とても大切なことだと思います。
 私が星野さんの写真に初めて出会ったのは、二〇〇六年の秋、私の職場でもあった福島の百貨店での展覧会場でした。その展覧会ではたくさんの人たちに助けて頂き、会場内で星野さんの本の「読み聞かせ」をしました。その時、読んだのがこの『クマよ』です。
 この本の最後にこうあります。「おまえの すがたは もう見えないが 雪の下に うずくまった いのちの 気配に 耳をすます」
 星野さんはもういないけれど、星野さんが残してくれた、たくさんの写真と文章はいつまでも私たちに生命の尊さを教えてくれているような気がします。
 
(2009/01/30 投稿)

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