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プレゼント 書評こぼれ話

  文庫本にはいくつかの
  効用があって、
  そのうちのひとつは
  単行本の際には読み落とした作品と
  文庫本で初めて出逢えることも
  あるのではないでしょうか。
  本屋さんでは
  文庫本の新刊などはしっかり平台で
  陳列されていますから
  目につくことが多いのだと思います。
  今日紹介する唯川恵さんの
  『とける、とろける』も
  そんな一冊です。
  女性作家が官能を描くということは
  最近では珍しくなくなりましたが
  この『とける、とろける』も
  女性ならではの官能にせまっています。

  じゃあ、読もう。

とける、とろける (新潮文庫)とける、とろける (新潮文庫)
(2010/10)
唯川 恵

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sai.wingpen  白いのっぺらぼう                 矢印 bk1書評ページへ

 女性が性を語るのは今や珍しいことではない。特に女性作家たちは果敢に官能を表現し、性を描こうとする。互いに性を持ち、互いに快楽を享受するならば、そのことに不思議はない。しかし、やはりどこかで男性の性と女性のそれは微妙に違うように感じる。
 「著者初めての官能恋愛小説集」とうたわれた唯川恵の九篇の短編集には、さまざまな立場の女性が描かれている。幸福な家庭の主婦、キャリアウーマンとして活躍する女性、婚期を過ぎたOL、・・・。立場や環境は違えども、彼女たちはけっして幸福ではない。満たされない思いに悲鳴をあげている。その満たされない思いはすべて愛情や性欲というものではない。強いて言うならば、自分をひきとめてくれる何かだろうか。

 「来訪者」という作品には二人の女性が描かれている。一人はほとんだ結婚生活が破綻している博子。もう一人は博子の学生時代の親友美里。美里の結婚生活は充足しているように見える。
 しかし、美里には夫以外の恋人がいて、彼女はそのことで満足しているのだという。
 「セックスにいちばん邪魔なのは羞恥だってこと。私はもう、彼の前で恥ずかしいことなんて何もない」と博子にうそぶく美里。そのことに謎が潜むのだが、この二人の女性のもとに密やかに忍んでくる「来訪者」とは、彼女たちの心の奥底にひそむ官能への誘いであり、自分をひきとめる強い力の渇望だといえる。

 同じような構図の作品がある。「白い顔」と題された作品の主人公秋子こそ、結婚し子供をもうけ幸福の絶頂にある。しかし、獰猛な男の幻影に惑わせれて、自らの顔さえ喪っていく秋子の姿は、女性としての幸福とは何だろうかという問いかけでもある。
 秋子も「来訪者」の博子や美里同様に、自ら心の闇に「来訪者」をひきいれてしまうのである。

 この短編集に描かれた九人の女性たちが誰ひとりとして幸福に見えないのはどうしてだろう。あるいは、これらの作品に登場する男性もまた存在感が薄いのは何故だろう。
 唯川恵の描いた「官能」こそ「目も鼻も口もない、つるりと白いのっぺらぼう」であり、存在しない「来訪者」のような気がする。
  
(2011/01/14 投稿)

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