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プレゼント 書評こぼれ話

  字が上手くないので、
  ワープロが発売された時はうれしかったですね。
  まだ画面に一行程度しか表示されない機種の
  時代に購入したことがありますから
  相当な手書き嫌いといっていいです。
  小学生の頃に
  「あなたの字は幽霊のしっぽみたい」と
  言われたのがトラウマになったのかも。
  ただ言われた本人、私ですが
  「幽霊のしっぽ」ってうまいこと言うなと
  感心したりしているのですが。
  今日の本は
  開高健の直筆原稿版の『夏の闇』。
  開高健の文字って大好きです。
  なんとも人をひきつけてやまない文字。
  これぞ、開高健です。
  この本のはじめに
  開高健の揮毫があります。

   入ってきて 人生と叫び
   出ていって 死と叫ぶ

  まいりました。

  じゃあ、読もう。

夏の闇―直筆原稿縮刷版夏の闇―直筆原稿縮刷版
(2010/05)
開高 健

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sai.wingpen  文字のむこうで作家が微笑む                 矢印 bk1書評ページへ

 友人にじつに丁寧に文字を書く男がいます。そばで見ているとそのゆっくりとした筆の運びに苛々するのですが、蚯蚓(みみず)が這ったような我が文字と較べると、この男の気性の真面目さに思い至るのです。
 字はその人の性格をよくあらわすものなのでしょう。だとしたら、我が蚯蚓(みみず)文字ははたしてどんな気質のあらわれなのか。

 開高健の名作『夏の闇』を作者の自筆原稿(生原稿を51%に縮小して本作品は組まれています)で読めるなんてことは考えたこともありませんでした。ただこうして実際にほとんど修正もされていない完璧な原稿を読むと、開高健という作家がもっていた本質を感じとれるような気がなります。
 この本の巻末に付された「開高健記念会会長」の坂本忠雄氏の解説から引用すれば、開高の直筆は「字の姿に人懐っこい円やかさと繊細さが兼ねそなわっていて、その字の連なりから独特の快感が伝わって」きます。
 文字のむこうで、開高のぽっちゃりとした笑顔が浮かんでくるかのようです。それはまるでいたずらを見つけられた子供のようであって、「気取りのなさ、伸びやかさとともにユーモアが漂って」いる字体と共鳴します。

 ただこの小説はそんな字体をみごとに裏切っています。贅肉をそぎおとした文体といっていいでしょう。
 この作品に初めて触れた若い頃、この作品が映画化されるのであれば、この物語に登場する男女は日本人の俳優が演じない方が似合うだろう、と思ったことがあります。それほどに、冷ややかで知的で繊細な作品だという印象をもったものです。

 作家というのは常に前を向いて歩く職業です。それはもしかすると己の自筆原稿を振り返ることの気恥ずかしさからくるのではないか。開高健の自筆原稿を見て、そう感じました。
  
(2011/02/10 投稿)

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