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プレゼント 書評こぼれ話

  本屋さんを歩く楽しみは
  何度も書いてきました。
  そこで好きな作家の新しい本を見つけた時の
  うれしさといったら、
  これほどうれしいことはありません。
  最近見つけたそんな1冊が
  川上弘美さんの『ナマズの幸運。』という本。
  これは川上弘美さんの「東京日記」という
  シリーズの3巻めにあたるもの。
  そこで、今日と明日は1巻2巻の蔵出し書評
  あさって新しい本の紹介します。
  このシリーズのなんともいえない
  不思議な世界をお楽しみ下さい。
  それにしても
  川上弘美さんっていいな。

  じゃあ、読もう。

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。東京日記 卵一個ぶんのお祝い。
(2005/09)
川上 弘美

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sai.wingpen  風邪に効く(かもしれない)本                  矢印 bk1書評ページへ

 風邪をひいた。こんこん、咳がでた。咳の都度体温がじわっと上がっていくようで、いやだなぁと思っていたら、どーんという感じで風邪にまとわりつかれ、仕事を休んだ。最近疲れていたから、と自身に言い聞かせるようにして布団にくるまっていた。TVもつけず、新聞も開かなかった。川上弘美さんの『卵一個ぶんのお祝い。』があったので、少し読んでは眠り、起きては少し読んだ。読むたびに、風邪の熱が少しずつ剥がれていく感じがした。

 本って一体何だろう。時々考える。情報源だとしたら、風邪で寝込んだ日の私の唯一の情報源が、この『卵一個ぶんのお祝い。』だったことになる。五分の四くらいの本当が書かれた日記みたいなこの本でどのような情報を得たかというと、オクラの気持ちになるにはみどりっぽい気分が必要だとか、母親に「かならずたすけます」という手紙を書く子供がいることとか、どうでもいいことばかりだ。でも、風邪をひいた頭には絶句したり、嘆息するような情報よりも、このどうでもいいようなことがちょうどよかった。

 さらに本って何だろうと考える。本が愉楽だとすれば、蕁麻疹がでるほどの強さもなく、蚊の足のような軽さとまではいかない、この本の愉楽が風邪をひいた頭にはちょうどよかった。待ち合わせの店に行ったら定休日だったので仕方なく道に蝋石で「ばか」と書いて帰った話や寝ても覚めてもめかぶに夢中になる話など、電子体温計でもなく、今流行りの耳式でもなく、手のひらを額にあてて熱を測ってもらっているような感じの愉楽が心地よかった。そんなおおざっぱな気分が川上さんの目線にはある。それが楽しい。

 昔子供だった頃、風邪をひくと、母親が林檎をおろし金で摺ってりんご汁を作ってくれた。それが美味しかった。今なら市販のリンゴジュースがあるから、誰もそんな手間なことはしない。でもできれば大人になった今でもおろし金で摺ったりんご汁が飲みたい。川上さんの本が気持ちいいのは、そんななつかしい感じがするからかもしれないと布団の中で思った。
 そうしたら、少し風邪が治った気持ちがした。
  
(2005/10/16 投稿)

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