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プレゼント 書評こぼれ話

  今日紹介した百年文庫
  自然との闘いを描いた短編3作が収められています。
  シートンがはいってもよかったかな。
  でも、日本のシートンと呼ばれた
  戸川幸夫さんの作品を読めたのは
  よかったです。
  いつか読みたいと思っていましたから。
  この本に収められている『爪王』も
  面白かったです。
  今度また読んでみたい作家です。
  ジャック・ロンドンの『焚火』は
  誰かかすごく面白いと書いているのを
  目にしたことがあるのですが
  それが誰だったか
  思い出せなくて
  うーん、残念。

  じゃあ、読もう。

(020)掟 (百年文庫)(020)掟 (百年文庫)
(2010/10/13)
戸川幸夫、ジャック・ロンドン 他

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sai.wingpen  人間は自然に対して愚かだ                矢印 bk1書評ページへ

 今回の東日本大震災でもそうだが、自然の力というのはとても怖ろしい。人はつい傲慢にもそのことを忘れてしまう。強い自然の中で私たちも動物たちも生かされていることを忘れてはいけないのだ。
 百年文庫の20巻めは「掟」というタイトルがつけられ、動物と人、自然と人、そして人と人との関係を描いた3作が収められている。
 生きていくことにはしばしば「掟」が定められている。それはこの地球が誕生した時からあらゆるものたちが生存するための約束事であるはずだ。ここに収録された3作はそのことをじっと見つめている。

 秀逸なのは、厳寒のアラスカの森に無謀にも立ち入った一人の男の悲劇を描いたジャック・ロンドンの『焚火』だろう。
 極寒の日には一人旅などするものではない、という村の老人の意見を聞くこともなく森に入り込んでいく男。次第に手足は麻痺し始める。それでもまだ男は自然の恐ろしさに気づかない。焚火の暖さえとれれば寒さをしのげると思っているのだ。ようやくついた焚火に木のたまった雪が落ち、唯一の暖は一瞬にして消えてしまう。まだマッチはある。しかし、すでに男の手は感覚さえなくなっている。そばにいるのは一匹のエスキモー犬だけ。男にあるのはただ死。
 これほどに冷静に死を描いた作品も珍しいのではないだろうか。
 片時も目を離せなくなる。愚かな男の過信を私たちは笑うことができない。自然を、あるいは経験を侮ることの恐ろしさを改めて感じる。

 戸川幸夫の『爪王』は鷹と赤狐の死闘を描きつつ、鷹を育てる古老の鷹匠の意地にも焦点をあてる。
 この物語の主人公たる若鷹「吹雪」の誕生から親離れまでの前章がいい。戸川の畳みかけてくるような短文のリズム感が記録文学のようなリアリズムを醸し出している。
 『谷間の百合』などで有名なバルザックの『海辺の悲劇』は、観光気分の男女を震撼とさせる父と子の関係を描いている。
 人間には踏み外してはいけないことがある。それが人間の掟として厳然とあるのだと、バルザックは描きたかったのだろう。
  
(2011/04/16 投稿)

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