04/12/2011 そういうものだろ、仕事っていうのは(重松 清、野中 柊 他):書評「働くということ」

亡くなった母はよく
「働くというのは、傍(はた)を楽にすることだよ」と
言っていました。
50才を過ぎた息子に
まわりの人からかわいがってもらいなさいと
手紙をくれたこともあります。
もう30年以上働いていますが
働くことの意味が全部わかっているかというと
あんまり自信があるわけでもありません。
でも、人として
働くことは社会で生きる基本だと思います。
今日紹介する『そういうものだろ、仕事っていうのは』は
そんなことを6人の作家たちが
それぞれの視点で描いた短編集です。
ぜひ、それぞれ
働くということを考えてみて下さい。
じゃあ、読もう。
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春、社会人としてスタートをきった人たちにはまだ戸惑いが多いと思います。働くということは単にお金を稼ぐということだけでなく、自分の生きがいと密接につながっていきます。
それは今の自分のあれやこれやということではなく、働くことを通じて生まれ変化し、やがてこれだと気づくものです。
だから、焦ることなく、じっくりと仕事に取り組んでいけばいいのではないでしょうか。そう、たまには本などじっくり読みながら。
本書には、定年退職したあと駅の蕎麦チェーンに就職した父親の姿を描く重松清の『ホームにて、蕎麦』、休暇先の沖縄のゲストハウスで出会った人々の思いがけない表情を描く石田衣良の『ハート・オブ・ゴールド』、仕事に追われ次第に神経を病んでいく銀行員とその家族を描く盛田隆二の『きみがつらいのは、まだあきらめていないから』など、6人の作家による仕事にまつわる短編が収録されています。
書名の「そういうものだろ、仕事っていうのは」は、重松清の作品の一節からとられています。「そういうもの」というのは、蕎麦チェーンで働き始めた父親を心配する息子が若い頃営業マンとして働いていた父親の姿と自分の今の姿をだぶらせて「働くことって難しいですよね、理屈では割り切れないことばっかりみたいだし」という弱音のように吐いた言葉をさしています。
父親も抱えていた「そういうもの」は、仕事をしていると誰もがふと考えてしまうことかもしれません。
でも、「そういうもの」があるから仕事は面白いともいえます。「そういうもの」を克服するところに、生きがいとつながっていくものがあります。
大崎善生の『バルセロナの窓』の主人公も「そういうもの」を超えて若い頃同じ職場で働いていた友人とともにバルセロナの夕日をみつめています。その作品の一節、「働くというのは決して金のためだけではなく、人間としての機能のひとつなんだということ」に思わず頷きました。
(2011/04/12 投稿)

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