05/05/2011 八郎(斎藤 隆介/滝平二郎):書評「日本語は美しい」


男の子の節句です。
ということで、
強い人になってもらいたくて
取り上げたのが
斎藤隆介さんの『八郎』。
絵はもちろん、滝平二郎さん。
表紙の八郎の凛々しい顔ったら。
しかも清々しい。
こういう男になってほしいものです。
そういう私はというと
うーむ
どうも子供の頃にこういう本を
読まなかったせいか
きわめてだらしない。
そんな反省もこめて。
やっぱり男は強くなくちゃあいけないな。
あ、強くっていうのは
心根ですよ。
じゃあ、読もう。
![]() | 八郎 (日本傑作絵本シリーズ) (1967/11/01) 斎藤 隆介 商品詳細を見る |


日本語は美しい。斎藤隆介さんの『八郎』を読むと、つくづくそう思います。
書き出しはこうです。「むかしな、秋田のくにに、八郎って山男が住んでいたっけもの」。
このような言葉のリズムが全編続きます。だから、まるで音楽劇を楽しむように読めます。
もう少し紹介しましょう。今度は大男になった八郎が暴れ狂う海を山でせきとめようと、山を持ち上げる場面です。
「山のふもととてっぺんさ両手をかけると、めきめき、ゆっさゆっさ、ぐらぐら、がらがら、よおむ、む、むーんと、とうとうしょい上げて、顔まっかに力んでな、ひょろひょろ、ひょろひょろって、はまのほうさ歩き出したと」。
こんな時に自分のもっと音感があればと残念でなりません。まるで歌っているような文章です。
音楽さえ聞こえてきそうです。暴れ狂う波の音、八郎の息遣い、風の悲鳴、村人たちの悲鳴。打楽器の重い音、弦楽器の悲しい調べ。
みごとです。
体が大きくなった八郎は海と戦うことで、自分の体がどうしてこんなにも大きくなったかを理解します。物語のクライマックスです。ここも引用してみましょう。
「おらが、なしていままで、おっきくおっきくなりたかったか! おらはこうしておっきくおっきくなって、こうして、みんなのためになりたかったなだ、んでねが、わらしこ!」
なんという美しい言葉でしょ。
それに、滝平二郎さんの画もすてきです。大男の八郎のなんと優しそうな表情でしょう。そして、なんと凛々しい姿でしょう。滝平さんの画は優しさこそ強さだといっています。
斎藤さんと滝平さん。
二人のハーモニーが悲しい物語に終わらせないで、未来につづく物語にしています。
最後の一節も原文で紹介しておきます。「あの男わらしこはよ、おっきくなって、おっきくなって、ひとのためんなった八郎ばまねてよ、どこかで、おっきくなって、おっきくなっているべもの」
勇気をつなげる一冊です。
(2011/05/05 投稿)

応援よろしくお願いします。
(↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 今日もクリックありがとうございます)


レビュープラス
| Home |