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プレゼント 書評こぼれ話

  連休中はあさのあつこさんの『ようこそ、絵本館へ』や
  柳田邦男さんの本を頼りにして
  たくさんの絵本の書評を書きました。
  それでもまだまだ読みたい絵本がたくさんあって
  これからもしっかりと
  そしてちゃんと読まないといけないなあと思っています。
  今日紹介する『百年の家』も
  あさのあつこさんの本に誘われて
  手にした一冊ですが
  本当に胸が震えるほど感動しました。
  重厚な絵画をみているような
  静かな詩を読んでいるような
  そんな感動です。
  ぎゅっと抱きしめたくなるようなと
  いってもいいかな。
  こういう絵本を読むと
  これはもう子供だけのためにあるのではなく
  人間すべての人のためにあるのだと
  思ってしまうのも
  けっして間違いではないのではないでしょうか。

  じゃあ、読もう。

百年の家 (講談社の翻訳絵本)百年の家 (講談社の翻訳絵本)
(2010/03/11)
J.パトリック・ルイス、ロベルト・インノチェンティ 他

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sai.wingpen  長編小説のような絵本                     矢印 bk1書評ページへ

 16世紀の画家ブリューゲルは「農民画家」と呼ばれるほどたくさんの農民の姿をキャンパスに残しました。『農民の踊り』『子どもの遊戯』といった代表作では画面いっぱいに人々が描かれていて、当時の風俗を知る一助になっています。
 そんなブリューゲルの絵の雰囲気をこの絵本でも楽しむことができます。作画はインノチェンティというイタリアの人です。
 一軒の古い、石造りの家の100年の歴史をつづったこの絵本ではもちろん「家」が中心になっていて、見開き2ページの右半分に「家」が描かれています。
 左半分は段状の丘になっています。その丘で時に小麦が作られ、時にぶどうが栽培される。
 手前には「家」から町につづく道がある。この道を通って男たちは戦場へと行き、小さな箱にはいって戻ってきた。子供たちは雪の道を学校へと歩き、成長して「家」を出ていった。
 人は生まれ、成長し、やがて死んでいく。人は手をたたき、笑い、嘆き、涙し、そして静かに目を瞑る。それらのすべてを「家」だけがじっと見ています。
 なんと深い絵本でしょう。

 パトリック・ルイスが文を書き、それを詩人の長田弘が翻訳した文章もまたいいのです。
 たとえば第一次世界大戦が終わってしばしの平和が訪れた「家」にはこんな文がついています。
 「家の暖炉で、からだを暖めて、子どもたちは学校にゆく。/よい心と、教科書と、そして薪を、いっしょに持って。/みんなが無邪気でいられた時間は、すてきだった。でも、短かった」。
 このなかの「よい心と…」の一節につかまりました。かつて人々は「よい心」を持って学校に通っていたのです。
 そんな詩のような文が「家」と人々を描いています。

 100年後のこの「家」がどんなであったか、そしてその姿をみて、人は何を想うでしょう。
 読み終わったあと、なんだか長編小説を読んだあとのような深い感動につつまれました。
 絵本の、おそらく頂上にあるような一冊です。
  
(2011/05/08 投稿)

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