05/14/2011 命 (百年文庫)(シュトルム、オー・ヘンリ 他):書評「命とは何だろう」

今回紹介する「百年文庫」は
「命」というタイトル。
海外の小説3作が紹介されています。
ぜひとも読みたかったのが
オー・ヘンリーの『最後の一葉』。
もう有名すぎて
誰もが知っている物語。
でも、この物語をいつ読んだのか
ちっとも覚えていないんです。
もしかしたら、
教科書かなにかに載っていたのかなぁ。
きっと学習すること多そうだし。
誰にもそんな物語があると思います。
子供の頃に読んで
わかったような気持ちになっているような
物語。
大人になってもう一度読み返すと
きっと違う読後感が味わえるのでは
ないでしょうか。
じゃあ、読もう。
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命とはなんだろう。生理学的な生とは違うような気がする。なんといえばいいだろうか、もっと神秘的で人間としての根幹にあるもの。感情をともなうもの。
どうもうまくいえないが、だからだろうか、文学は命をみつづけてきたともいえる。文学のすべての営みは、命へとつながっている。
「百年文庫」の21巻めのタイトルは「命」。
『みずうみ』や『三色すみれ』といった作品で有名なシュトルムの『レナ・ヴィース』、短編小説の名手オー・ヘンリーの『最後の一葉』、そしてヤーコプ・ヴァッサーマン(この作家は名前も知らなかった)の『お守り』の、海外作品三篇が収録されている。
読みたかったのは、オー・ヘンリーの『最後の一葉』。有名な作品だ。
ずっと昔に読んだ覚えもあるし、おおまかな荒筋であれば諳んじていえる。病気になって気弱になっている少女。窓越しの蔦の葉がすべて散り落ちる時には自分の命も終わるだろうと思い込んでいる。
一枚散り、一枚落ち、もう残りはわずか。そして、雨の夜、朝になればすべての葉は落ちているだろう。しかし、最後の一葉だけはしっかりと残っていた。
おそらく誰もが知っている結末をここでたどる必要はないだろう。
少女の命とひきかえに消えていった老画家の命。命の不思議さ、残酷さを考えさせる、不滅の一篇だろう。
シュトルムの『レナ・ヴィース』は一人の女性の一生をじっとみつめた好篇だ。
人間としての尊厳を死のまぎわまで持ち続けたレナをそばで見続ける「私」の視点は、まるで映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のようである。
もう一篇のヴァッサーマンの『お守り』は運命に翻弄されるクリスチーヌという女性を描いている。
不幸と幸福。誰もが幸福を願うのだが、小さい頃からつらい日々を過ごしたクリスチーヌはそんな願いさえ捨ててしまっている。それでも、彼女はやがて小さな命を授かるのだが、そんなささやかな幸福さえ、彼女の運命は受け入れることはできない。
最後には自分の息子の命さえ奪ってしまうクリスチーヌ。彼女の重い運命はそれでも最後に報われることになるが、その時にはもう彼女の命は消えようとしていた。
命とは単に生命の維持装置ではない。
喜びも悲しみも残酷も平安も受けとめるもの。
クリスチーヌの「お守り」は一体彼女から何を守ったのだろう。
(2011/05/14 投稿)

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