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プレゼント 書評こぼれ話

  沢木耕太郎さんを知ったのは
  私が大学生の頃でした。
  だから、もうかれこれ
  30年以上沢木耕太郎の作品を
  読みつづけてきたことになります。
  沢木耕太郎さんの作品は
  まさに同時代の作品という印象があって
  おそらくこれからもそれは
  変わらないだろうと
  思います。
  今日紹介するのは沢木耕太郎さんの
  短編小説集『あなたがいる場所』です。
  沢木耕太郎さんの新刊ということで
  手にとったそんな本の表紙挿画が
  いせひでこさんだったのも
  私にはうれしい一冊です。

  じゃあ、読もう。

あなたがいる場所あなたがいる場所
(2011/04)
沢木 耕太郎

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sai.wingpen  同じバスにのって                  矢印 bk1書評ページへ

 表紙を開くと、「バスを降りると、そこは」という言葉がそっと置かれていて、次のページにこの本の書名である「あなたがいる場所」と続く。
 ここはどこだろう?
 ここは私のいる場所なのか?
 心の打ち解けない友人とそれなりの付き合いをする少女か? 迷子のふりをする女の子を助けようとする少年か? 偶然に同じバスに乗り合わせた若い女性の髪にかかる虹に夢中になる会社員か? 事故で娘を亡くして茫然とする夫婦か? 年老いた夫を最後には手にかける老婆か?
 沢木耕太郎が描く9つの物語のどこかに、私がいるというのだろうか。

 一台のバスは私たちをどこに連れていってくれるというのだろう。
 バス停にとまってドアが開き、タラップを降りたそこは、作者が創造した世界なのだが、きっと「ここは私のいる場所」だと思える瞬間がある。もちろん、物語に登場する人たちと私は同じではない。物語に描かれるストーリーは私のそれと同じではない。
 でも、少女の気持ち、少年の苛立ち、夫婦の悔恨、老婆の愛、どこかに私はいる。

 沢木耕太郎はもう長い年月、私たちの兄であった。沢木が見てきた世界に酔いしれたのは青春期のことだ。
 沢木はずっと先を行くのではなく、数歩先を歩いていた兄のような存在だった。沢木にいろんなことを教えられた。
 そして、本当は沢木耕太郎もいろんなことをたくさんのことから学んでいたはずだ。ただそれを声高に話さなかっただけだ。
 沢木耕太郎と私たちはずっと同じバスに乗ってきたんだ。
 だから思う。
 「バスを降りると、そこは」沢木耕太郎がいる場所なんだ。
 いつでも、これからも。
  
(2011/05/18 投稿)

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