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プレゼント 書評こぼれ話

  作家というのは
  仕合せな職業だと思うことがあります。
  どうしてかというと
  亡くなっても
  その作品を読んでもらうことができるし
  新しい本だって出版されることもある。
  普通の仕事だったら
  なかなかそういうわけにはいかない。
  今日紹介するのは
  昨年亡くなった井上ひさしさんの
  最近出版された
  『日本語教室』。
  さすが井上ひさしさんで
  亡くなってからも
  どんどん新しい本が出版されています。
  それって、すごい。

  じゃあ、読もう。

日本語教室 (新潮新書)日本語教室 (新潮新書)
(2011/03)
井上 ひさし

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sai.wingpen  「みなさーん」って、ドンガバチョは話しはじめた          矢印 bk1書評ページへ

 本書は昨年(2010年)亡くなられて井上ひさしさんが2001年に母校の上智大学で四回にわたって講義をされた「日本語教室」の再現版です。
 全四回の内容は、「日本語はいまどうなっているのか」「日本語はどうつくられたのか」「日本語はどのように話されるのか」「日本語はどのように表現されるのか」となっています。
 あれだけ面白い喜劇や物語を作った井上さんですから、この講演もとても面白い。活字で読んでもこれだけ面白いのですから、生のお話はどれほどであったかと、ライブでこの講演を聴かれた方がうらやましくて仕方がありません。

 この講演のなかで井上さんは結構辛辣な発言もされていますが、とても日本語を愛されていた作家だということがわかります。
 以下、井上さんの講演から引用すると、「使っている人の言葉のそれぞれが日本語で、その総和が日本語なのだと僕は思っています。だからわれわれ一人一人が日本語を勉強して、日本語を正確に、しかも情熱をこめて、自分のことはちゃんと相手に言えるし、伝えることができる、そのような言葉を一人一人が磨くしかないと思っています」となります。
 このなかで重要なのは、繰り返しでてくる「一人一人」という言葉です。誰かが日本語のことを考えるのではなく(たとえば、この講演のように井上さんが日本語のことを考えるのではなく)、「一人一人」がそのことを考えないと、言葉はよくならないということです。

 この講演の冒頭で井上さんは若い人の言葉が理解できないというようなことを話されています。
 きっと若い人たちは日本語のことなど考えていないのではないか。もっといえば、若い人だけでなく、お年をめされた人だってそうだし、働きざかりの人だってそうです。もっと真剣に日本語のことを考えないと、私たちの国の言葉は一体何語なのかわからなくなってしまいます。
 最近公用語に英語を採用する企業が増えています。グローバルな視点にたてばそれも仕方がないでしょうが、その前提としてきちんとした日本語を使いこなせることがあるのではないでしょうか。

 こういう本を読むと、やはり井上ひさしさんにはもう少し長生きして欲しかったと思いますが、こればかりはどうしようもありません。だからこそ、私たちは井上さんから受け継いだ者としてうつくしい日本語を使いたいものです。
  
(2011/05/20 投稿)

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